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□真夜中の交差点
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「今日もサークルはなあなあだったね」
「うん、まあ、こんなもんだと思うよ」

 AKBCの活動がなあなあなのは今に始まったことじゃない。それこそ、俺やヒロが1年の頃からずっとこんな感じで、暮れの頃には来年このサークルはあるのだろうかと語っているくらい。
 来年まではハマちゃんがいるかサークルがなくなるということはないだろうけど、その次まで行くといよいよ本格的に怪しい。だから一生懸命人を集めて、ということにもならないのがこのサークル。

「ヒデさん明日ファンフェスっすよね」
「そうだよ」
「ヒロさん、見に行きましょうよ」
「えー」

 ファンタジックフェスタというイベントにも、青敬から出ているのは俺1人。定例会でなければ出てもいなかったと思う。本来なら定例会の3年生ということで班を率いる立場。
 だけど、青敬の活動がラジオメインというわけでもないし、俺自身そこまで1人前というわけでもない。俺の班の班長は星ヶ丘の朝霞で、あとはラジオメインの2年生たちがいる。
 ファンフェスを見に行ってみたいというハマちゃんの誘いにも、ヒロは顔色ひとつ変えないまま渋い返事を続けた。本当に渋っているのか満更でもないのかわからない無表情。

 今年のヒロは、去年までと比べて少し元気がない。呪いの民俗学というニッチな物を専攻しているというのもヒロに対する印象には大きな影響を与えているように思う。
 あまり表情を変えないし、笑っていても薄ら笑いのように見える顔つきもあって誤解されがちだけど、本来はかなり明るい性格をしている。明るいと言うか、悪乗り好き?
 そのヒロが、どんなネタを振られても「返し」をしない。今まではフリに対して返しがあったと思うんだけど。そうするだけの余裕がないのかもしれない。顔色は日に日に悪くなっていた。
 こないだから、サークルの活動中にもお腹に手を当ててじっと何かを堪えているような様子は見せていた。あまり痛むようなら病院に行った方がと勧めたけど、医療費がと突っぱねられた。
 確かに、1人暮らしだと病院に行くのも一苦労なのはわからないでもない。だけど、お金よりは命の方が大事なんだから。とは言え、あまり無理強いすることも出来ないまま現在に至っている。

「明日ヒロさん迎えに行きますから! 一緒に見に行くんすよ、覚えといてくださいよ」
「はいはい。松江、今何時?」
「7時前だね」
「じゃあ、今日はもう解散しよう」
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