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□ハローカミングニュースター
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「ビラは撒いた、ポスターも貼った、ヒゲも使ってる」
「あとは人が来るのを待つだけだね」

 やるべきことはやった、と言わんばかりに高ピーは自分の指定席で500mlパックのコーヒー牛乳を飲んで待つものを待っている。俺は、ミキサー席に座って何をするでもなくクロスフェードの練習なんかをしていたりする。

 4月上旬は、どこの団体も新入生勧誘に忙しくなる。それはうちのサークルも例外ではなくて、今年は出来れば1年生が5人は欲しいなって思っていたりする。
 緑ヶ丘大学は体育会系の勢力も強いし、サークルとなるとそれこそ星の数ほどあるけど、その中でも、サークル棟に部室をもらえている分割とメジャーなサークルだろうという自負はあるけど、イマイチ知名度はそんなに高くない。だから、この時期は本当に戦争だ。

「しかしあれだ、今日は1年どころか現役すら来ねぇんじゃねぇのか?」
「そうだね、一応サークル始まって30分経つけど俺と高ピーしかいないとか」
「武藤がいねぇのは別にいつものことだからいーんだけどよ。むしろ来られても金ねぇし。つーか果林はどうした、果林は」
「果林は多分ゼミの方で捕まってるんじゃないのかなぁ」
「あー、ヒゲゼミだもんな。じゃあLはどうしたよ」
「理系は理系でゼミの方が忙しいみたいよ」
「ったくどいつもこいつも、来ねぇなら連絡のひとつでも寄こせっつーの」

 そう、高ピーの嘆きはごもっとも。本来もっと人がいるはずのMBCCなのに、現在サークル室には2人だけ。まあ、みんなそれぞれ忙しいのもわかるけどね。それに、連絡が来たら1年生からかな、って思って期待しちゃうしね。

「まあまあ高ピー、今は気長に待とうよ。そのうち誰か来るかもしれないし」
「だといいけどな」

 学内各所に張られたポスターに書かれたサークル概要にはちゃんと活動曜日と時間と場所と、俺と高ピーの連絡先が書かれている。1年生がうちのサークルに見学に来る場合はその連絡先にメールでも電話でも入れてくれる、のが基本。
 ただ、このポスター、掲示場所がかなり限られていて、各団体5枚までと決まっている。うちのサークルは(名前だけの)顧問であるヒゲ教授の力を使って学内の目立つところに6枚目のポスターを貼らせてもらってるんだけど、他のところにあるポスターは油断すると他の団体のそれに埋めつくされて存在すらなかったことになってしまうのが恐ろしいところ。忘れた頃に発掘されるんだ。
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