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□ウワサのあのコのシルエット
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「そんじゃ果林、対策の報告」
「はーい」

 蒸し暑い6月上旬。今日もいつものようにサークルが始まり、高崎先輩の進行で果林先輩から技術向上対策委員や定例会の報告がされる。

「えっとですねー、夏合宿の班が決まったんで、その報告ですー」
「おっ、そんな季節か。ちょっと編成見して」
「はいどうぞ。で、合宿なんですけどー、」

 果林先輩の報告を聞きながら高崎先輩も見ていると、一瞬苦笑いを浮かべたかと思えば目が合う。高崎先輩は今回合宿には参加しないから、これはひょっとしなくても俺に対する苦笑いだろう。それに気付いてしまった瞬間、果林先輩の話が右から左に抜けていく。

「まあそんな感じなんで、班は適当に確認しといて下さい」

 その瞬間、合宿に参加するしないに関わらず2、3年生がその紙に群がる。1年生はその波が引いてから見るのがいい、というのはその場にいる1年みんなが思ったこと。そして気が付けば俺の頭上から降ってくる高崎先輩の声。

「高木、」
「はい」
「お前も大変な相手に当たったな」
「え、どういうことですか」
「いや、お前がペア組む相手――…いや、なんでもない」
「?」
「俺くらいになれば班編成見りゃ誰と誰がペアになる、とかはわかるようになるんだけどよ。……まあ、せいぜい頑張れ」

 それだけ言ってコーヒーを買いにサークル室から出てしまった先輩の背中を目で追い、不安を煽るだけ煽って出て行くのはどうだかなぁとか思ってみたり。すると中津川くんが俺の思っていることを代弁するかのように、1年の不安を煽るようなコトして何が楽しいんだか、と溜め息をひとつ。
 2、3年生の波がようやく紙から引き始めた頃、俺たちもようやく班編成を見ることが出来た。と言うか、いくら鈍感の俺でも気付く。先輩たちが俺の反応を楽しんでいるんじゃないかってことに。そしてその編成を見て、高崎先輩の言いたいことが何となくわかってしまった。

「ちょっ、高木お前の班! 先輩豪華すぎね!?」
「うん、俺もそれを驚いてるトコ」
「てかタカティいいなー、果林先輩と菜月先輩の班〜!」

 俺の班は、班長に果林先輩がいて、副班長に向島の土田先輩。そして3年生枠に初心者講習会で講師を務めたあの奥村先輩がいるという豪華な布陣だ。俺を含めたあと3人は1年で、アナミキそれぞれ3人ずつの6人編成となっている。
 でも高崎先輩、この編成だと、先輩ほどの経験値がなくても誰と誰がペアになりそうかは大体予想が付きますよ――…

「つーか高木、お前これ消去法でペアなっち先輩じゃね!?」
「え、」
「だって大学合同合宿でMBCC同士組んでもしょうがねーべ、果林先輩はまず消えるだろ。で、フツーに考えてこの1年アナの面倒はりっちゃん先輩が見るに決まってんべ! そしたらお前の相手は必然的に、」
「奥村先輩か……」
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