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□華麗なる女帝のさじ加減
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 スプーンを持っていた右手にはシャーペンを。そしてノサカと電話越しの緊急ミーティングが始まる。とは言え自分も去年はノサカ側の立場だったから、対策側が何を望んでいるかは手に取るようにわかる。

「お前、臨時の代理講師にアナミキ全体講習までさせようなんて随分人遣いが荒いじゃないか」
『申し訳ございません』

 ――と、ノサカが謝るが、うちに謝るべきはそのドタキャンした講師だろう。ったく、誰に頼んでたんだコイツら。高崎にそういう話が行ってたって話は聞かないし、青女勢は多分インフォメーション講師として呼ばれてる。誰に声がかかってたんだ? あるいは妙な口を出した奴がいるのかもしれない。ノサカに口を出したがる奴には身内で心当たりがある。

『そしてもうひとつお願いがあるのですが……』
「もったいぶらずにさっさと言え。カレーが冷める」
『あの、15分の見本番組を実際に行っていただきたく……』

 あーあーあー、そうですか。そうきましたか。見本番組を。

「ちょっと待て、うちがそんな急に言われて出来るタイプのアナじゃないっていうのはお前が一番知ってるはずだろ」
『はい、そうですね。毎週、昼放送のリハーサルにかなりの時間をかけていらっしゃるのは重々承知です』
「相手は誰なんだ、相手のミキサーは。やるにしても番組の打ち合わせをしないといけないだろう。大方ミキサー講師ってトコだろ、どこ大の誰だ?」
『菜月先輩にお願いする番組のミキサーは、向島大学の野坂が責任を持って担当させていただきますよ』
「あ、お前?」
『こんな急に無茶な頼みで番組までやっていただく立場なのに、これ以上他のミキサーさんにご迷惑をかけるワケにもいきません。それに、俺相手なら菜月先輩もそこまで肩に力を入れる必要はなくなるかと』

 これにはさすがにホッとしたというか。どこの誰ともわからないミキサーの講師と2日じゃ番組は作れない。いつも一緒に番組を作ってるノサカとなら2日しか時間がなくても15分番組だ、机上の打ち合わせでも何とかなりそうな気がしてきた。

「で、ミキサーの講師は誰なんだ?」
『ミキサーの講師は緑ヶ丘の伊東先輩にお願いしてあります』
「ああ、無難だな。とりあえず、相手がお前だったら先週の番組の15分版で大丈夫か?」
『はい、了解です。トークを1つ減らしてMMPインフォもカット、曲も減らす方向で。細かいキューシートは明日で』
「了解。今日を含めて準備期間が2日しかないから、そっちが必要としてることに漏れがあったら当日フォローを頼む」
『はい。本当にありがとうございます。あ、交通費等はすべて対策の予算で計上いたしますのでご心配なく。それと、昼食も先輩方はご持参なさらなくても大丈夫です』
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