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□Slow Communication
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「お邪魔しまーす」
「どうぞー」
サークルの後、エージが自分の家に帰るというときはこうやって助手席に彼を乗せることが増えた。ハナが住んでるアパートとエージが向かう駅が同じ方向ということもあって、乗り継ぎをする駅までは送るということが自然な流れになっていた。
「しかしあれだな。学祭の1年生番組と食品ブースはどうすっかね」
「うーん、食品ブースは毎年焼きそばっていうのがMBCCの伝統でしょ? あとは責任者がブース説明会に出たり検便とかをパスすれば問題なしだと思うけど」
「そっか」
「それを言ったら1年生番組の方が大変なんじゃないかな。いくら6人いるとは言ってもリク番もあるし」
10月に入り、学内は大学祭へ向けた空気が濃くなっていった。至るところにイベントの看板が立ってたり、ポスターが貼ってあったり。大学祭実行委員会の人が作業着や揃いのはっぴを着て歩く姿もちらほらと見られるようになった。
今日にしても、MBCCがサークル棟を後にしてもまだまだ実行委員の部屋は賑やかだった。きっと学祭が終わるまで彼らは忙しいままなのだろう。
MBCCは毎年食品ブースとDJブースを出展している。高崎先輩が大祭実行委員のお偉いサンと繋がりがあるらしく、そのコネでブースの立地は電気的な意味で、人通り的な意味でとても有利な場所にしてもらっているとは聞いた。
それに、ハナたちがこうして番組の企画を練っている間、高崎先輩とカズ先輩が何やら怪しい動きを見せている。きっとハナたちに内緒で何かを企んでいるのだろう。
食品ブースはさっきも言ったように焼きそばを出すのが毎年の伝統。1年生が店長としてそのブースを切り盛りしなくてはいけない。もちろん先輩たちも手伝ってはくれるけど、あくまで責任者は1年生。
DJブースはみんなでやる放送サークルとしての本業。各学年1時間くらいの番組とリクエスト番組を1組2時間。そのリクエストを募る箱も学内の各所に設置してある。
それとはまた別にステージのお仕事もあるみたいだけど、それは2年生以上の仕事らしい。高崎先輩の元に大祭実行委員の人がよく訪ねてくるようになった。あの人はきっと大祭実行委員のお偉いサンからも信頼されているのだろう。あんなテキトーなのに。
「ナンダカンダでやること多いべー」
「まあ、それもやりがいがあっていいんじゃない?」