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□とりあえず最終通告
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 安部ちゃんとお茶を飲みながら話していると、扉がコンコンと鳴らされる。新しいかりんとうをかじろうとしていた安部ちゃんが、少しムッとした表情ではーいと返事をすれば、開く扉。

「安部ちゃーん、来たっす」
「ああ、飯野君。少しのんびりだったね」
「あれっ、お茶会すか?」

 扉を開けてやってきたのは飯野だ。俺に対する最終通告の場をお茶会だなんて、また気の抜けた表現をしてくれる。ただ、安部ちゃんはご丁寧に飯野にもお茶を出すんだから本当に緩い。つーか飯野を呼び出した本題の話をすればいいのに。

「まあ、ゆっくりとしたお茶会にしたかったけどね」
「え、違うんすか。あっ、つーかこの時期に高崎と同時に呼び出されるとか全然いい予感がしない!」
「よく気付いたね飯野君」
「つーかお前人を疫病神みたいに言ってんじゃねぇよ」
「でも俺コイツと違って出席は全然足りてるじゃないっすか! 確かに学祭前に1回休んだけど、ハロウィンとクリスマスのボーナスでチャラになってるっしょ!」
「うん、飯野君の欠席回数は一応ゼロだね」

 鼻息を荒くしながら、出席率最下位である俺と同列に扱われる理由はどこにある、と暴く様は一生懸命すぎて滑稽だ。つーかお前がこのゼミにいる上での問題なんかひとつしかねぇだろ。

「飯野君はねー、レポートの文字数が全然足りてないんだよね。3年生になってから5回レポート課題を出したのかな。どれも文字数が半分もいってないよね」
「あー…でもめっちゃ頑張ったんすけどね」
「確かに文字数も内容も2年生のときに比べたら進歩してるけど、もうちょっと頑張ってもらえると嬉しいね」

 俺のウィークポイントが出席数だとするなら、飯野のウィークポイントはレポート課題だ。飯野はお世辞にもいいレポートを書くとは言えない。文字数も足りなきゃ内容に中身があるワケでもない。安部ちゃんの言う通り、去年よりは大分まともになったとは言え平均以下であることに変わりはない。
 レポートには大抵、最低何文字は書けといった字数制限がある。安部ゼミはレポート課題が多く、しかも量を書かせることで学部でもかなり有名だ。それだけ世間を生き経験を積み、本を読み思考をめぐらせ、それらを纏め上げた上でレポートに叩き込めと。

「このままだと飯野君もちょっと厳しいかな。まあ、出席してる分飯野君の方がまだ情状酌量の余地ありだけど」
「マジすかやった!」
「いや、つーかまだ全然喜べる段階じゃねぇからな」

 どうやら俺たちはどっちも崖っぷちにいるようだった。そんな崖っぷちで行われるお茶会がまたどこか不気味だ。
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