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□グッバイ ハロー
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「で、土田さんそろそろ本題に入って下さい」

 どういう話題の切り替えか、こーたが急に方向修正した。サークルでのこれまでの様子を見ている限りでは、MMP唯一の正当派ツッコミだ。先輩に対しても普通にツッコんできた様子からしてこれからのMMPを支えるツッコミとなるのは容易に想像できる。

「あー、そうだ本題。意外と春休み中にやらないといけないコトも少なくなかったンすわ」

 ヒロはその話を聞いているのかいないのか。早々に飲み終えたドリンクの代わりに水を注ぎに席を立ってしまった。相変わらず自由だ。対策委員の会議中もそんな感じで、青女の啓子さんからも、席を立つなとは言わないけど空気を読めとよくお叱りを受けている。

「春休み中にやること? 対策的には冬の番組制作会とかしか思いつかない」
「まあ野坂的にはそうだろうけど、MMP的なイベントにも目を向けてくれると嬉しい」
「大掃除か」
「まあ、掃除もするに越したことはないけど」
「えー、何だ?」

 それから軽く大喜利状態になっていた。それだけ俺がMMP的なイベントを思いつかなかったということだ。もしこの大喜利の現場を先輩方に見られていたとするなら間違いなくお叱りとローキックを受けていたことだろう。俺としてはボケているつもりは全くないんだけど、どうも律はそんな俺を見て呆れているようだ。

「野坂はもういいや。はい、次こーた」
「新歓の会議だったらもう少し先でもいいんじゃないですか?」
「こーた死ね。迎える前にやることがあるだろ」
「あ、追いコンですか?」

 一番近いイベントで言えばそうなる、と律が話を進めようとすれば、水を取りに行っていたヒロも戻ってくる。ナニナニ何の話?などと言って暢気な様子を見て、ヒロはやっぱり自由だなあと溜め息をひとつ。

「追いコンかー、全然思いつかなかった」
「野坂は特に先輩っ子だから即答してくれるかと思ったけど」
「ダメですよ土田さん、野坂さんは先輩が出て行くものだとは思ってませんし」

 こーたの言うことは的を射ていた。代替わり以降、どこかまだ先輩たちがサークルを引退したという実感が沸かないまま今に至っている。新生MMPがスタートしたと言っても実質的な活動はまだ始まっていない。
 先輩がいないという実感よりも先に、先輩に引退して欲しくないという思いの方が強い。律が俺を先輩っ子と表現したけど強ち間違ってないかもしれない。いつまでもそんなことを言っていられないのはわかっているけれど。
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