エコメモSS
□NO.701-800
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■家族になろうよ
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「はー、お先シャワーいただきましたー」
「あ、美弥子サンタオル場所わかりました?」
「うん、ありがとねー」
久々に、サークルの先輩を家に泊めることに。まあ、サークルの先輩と言うか彼氏のお姉さんと言うか。
シャワー上がりの美弥子サンがバスタオルを肩に羽織って部屋に入ってくる様が、まあ何と言いますか姉弟だなあとかしみじみと思ってしまうワケで。
「どしたの慧梨夏ちゃんボーッとしちゃって」
「あっ、いやその」
「ははーん、さてはアタシにカズを見たな?」
「ちょっ、何でわかるんですか!」
バレバレだし、とケラケラ笑われてしまえばもう為す術はなく。さらに何が悪いって。美弥子サン、多分だと思うけどシャンプーとかカズのヤツを使ったと思うんだよね。匂い的にそんな感じ。
うちとカズの部屋のバスルームにはそれぞれ各々が使ってるお風呂セットが置いてある。どこにいても自分たちの好きな物が使えるように。美弥子サンがそれを知ってるかどうかは別にしても、よりによってという感じ。まあ、好きなの使ってくださいとは言ったけど。
「でも慧梨夏ちゃん、この部屋結構カズの気配あるよね」
「やっぱりわかりますか」
「わかるよ、家族だもん。このバスタオルの畳み方とかも伊東家的」
まあ、この「家族だもん」という響きに羨ましいなあって思ったのは内緒の方向で。浅浦クンならともかく実の姉である美弥子サン相手に妬いてどーなるんですかって。
「美弥子サン、肩からバスタオルかけてるのがすっごいカズ的なんですよ」
「雅弘は頭からタオルかぶって上がってくるよ」
「えっ、そうなんですかそれ熱い!」
「で、シャワー上がりとかはオールバックにしてんの、髪煩わしいからって」
「浅浦クンのオールバックとか滅多に拝めるモノじゃないですよね」
いやーそーゆートコ全然変わんないわとまた美弥子サンはケラケラ笑うのだ。
ん? そんなこと、変わらないってのを知ってるっていうのは大学に入ってからもシャワー上がりを拝んだんですか美弥子サンっ!
「大学に入ってからって言うか2、3週間ほど前かな」
「――ってめっちゃ最近じゃないですか! ちょっ、それは何ですか復縁フラグか何かですか!?」
「いや、普通に幼馴染みだからね」
そして、アタシと雅弘がどうこうよりも自分とカズのことはどうなのと問い詰められればまたたじたじになってしまうワケで。顔が結構似てる方の姉弟だし、お風呂上がりのバスタオルやシャンプーの匂いも相まって。
そりゃ将来的にはっていうのは考えてなくもないですけど、この状況で言わされるのはとんでもなく恥ずかしいワケで。そりゃ将来的にはバスタオルの畳み方ひとつでいろいろ言えるようになりたいですけど! 「家族だもん」って言ってみたいですけど!
「慧梨夏ちゃんもシャワー浴びたら? アタシもカズの気持ちシンクロ出来ちゃうかも、姉弟だし」
「美弥子サンがうち相手にヤらしいコト考えるんですか?」
「そうか、カズはむっつりなのか」
「むっつりじゃないですよ、ドスケベです」
と言うかうちは彼氏のお姉さんに対して何を言ってるのやら。まあいいや、美弥子サンはそんな細かいことは気にしないと信じて。
ああそうか、この人はそんなに細かいことは気にしない性格だから元カレとの関係も良好なのかもしれない。ま、相手があることでもあるけど。
「慧梨夏ちゃんシャワーから上がったらその辺詳しく」
「えっ、うちは何を吐かされるんですか! せめて服は着ててくださいよね!」
同じ目、同じ匂いだとつい何でも喋っちゃうかもしれないから。お風呂上がりでずっと服を着ないところまで同じだったらたまったモンじゃない。せめて服だけは。お願いしますよ、お義姉さん。
end.
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