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□宿る情熱のシークエンス
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 バタン、と左から衝撃。相変わらずグロッキーな高崎が袋を提げて戻ってきた。後ろにも山口が勢い良く飛び乗ってくる。

「はい紗希ちゃんパピコ分けよー」
「いいの? ありがとう」

 後ろでリア充みたいなことをしてやがるなあ、なんて思いながらシートベルトを締め直せば、左から手が伸びてくる。何かと思えばご丁寧に封まで切られたパピコ。

「ん、やるよ」
「どーも。と言うかどうしてパピコなんだ?」
「お前が言ったんだろ、気休めになるモン買って来いって」

 これがまさかの乗り物酔い対策か。ただ、袋の中には水とフリスクもあるようだったから、それなりに長期戦を覚悟しているようだ。実際、星港駅から青年の家までは車で45分から道路状況によりけりではあるけど1時間弱。ある程度の備えは必要だ。

「そういや山口、モニターは何時からだ?」
「えっとね、ご飯食べ終わった後の6時半だったかな。今日は1班から3班までやるって。残念だったね高崎クン、議長サン4班だから明日だ」
「1班ってのは誰の班だ?」
「んっとね、班長が青女のKちゃんで、俺ら的に面白いのは伊東クンだね」
「おっ、初っ端からか」
「他に関係あるメンバーで言えば緑ヶ丘は射水ハナちゃんて子がいて、星大はテルがいるね」

 メンバーの予習はどんな番組になっているかを想像する上で重要な要素だ。個々人の技術もそうだけど、班としてのまとまりも大事になってくるのが合宿だから。コイツとコイツが合わさったらどうなるんだ、と笑い……時に苦笑混じりで予測することの楽しさだ。
 現対策委員の事実上のリーダーである相馬さんの班で、かつそれを支える立場の副班長が割と大人しい性格の羽咋ということは、冒険はさほどなさそうだ。伊東もいるし、安心して聞けそうだと車内で一致する。

「本番はリクエストとインフォも入ってくるんだっけか?」
「ううん、インフォは入らないらしいよー」
「マジか、インフォやると思ってこないだウチのアナ陣特別講習でシゴキまくったのに」
「高崎クンがシゴキまくるって言うとハンパないデショ……」
「ステージと半々のアタシたちには想像も絶するね……」

 パピコを吸い吸い高崎は夏のアナウンサー特別講習のメニューをつらつらと語る。練習メニューを聞いた山口も福島さんもそのエグさに若干引いている。その内容は、さすがラジオメインの緑ヶ丘だけあってガチだな、とだけ言っておこう。
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