エコメモSS
□NO.1201-1300
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■魔女の釜に融通はきかず
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これは嫌がらせか何かか。台所にはハロウィンでもないのに大きなカボチャがひと玉、ごろんと。それを買ってきた張本人は、これを美味しく化けさせてくださいなとウキウキしている。
「なあ慧梨夏、どういうつもりだ」
「本当は昨日食べたかったんだけどね」
「ゆず湯に入っただろ昨日」
「カボチャも食べたかったのー!」
冬至にすると風邪ひかないとかそういうあれこれはいくつかあるけど、わざわざカボチャまで準備するとはなー。ああそうか、ゆず湯で満足出来なかったか。
どうして俺がカボチャを扱うのをあまりよく思わないのかと言えば、それはカボチャが好きじゃないということの他にない。何だろな、食べた感じが何か嫌なんだよな。
「そりゃ、カズがカボチャ嫌いなのは知ってるけどさ、自分でやると結末が見えてるもん」
「ああ、カボチャが無駄になるな」
慧梨夏が料理音痴(と言うか家事一般が苦手)でなければ勝手に自己完結してくれたんだろうけど、どうにもこうにも怪我とか爆発とかそういう危険がつきまとうから一人で料理はさせたくない。
浅浦にはお前がこの人をダメにしてるって言われるけど、お前は慧梨夏に包丁握らすとどんだけ危ないか高2の時の調理実習で見なかったのかと。出来上がった物を食った高ピーが2日間寝込んだだろ。
「カズに呪い殺したい相手でもいればうちが料理をして、それを持ってその人のところに」
「あー、わかりましたやります、やらせていただきます」
とは言え普段からカボチャを扱わないだけに、俺の中にカボチャレシピはほとんどない。手持ちの料理本の中に何かないだろうかと本棚の前に陣取って。
そもそも冬至にカボチャを食べるのって、野菜のとれない冬でもビタミンとかをとって健康に〜みたいなことだろ? そしたら別にカボチャじゃなくてもいーじゃんか。
慧梨夏がネットで冬至のカボチャ料理を調べていると、カボチャと小豆を一緒に煮るとかっていう、俺を殺しにかかっているのかというレシピもヒット。
「これ、カズは絶対食べらんないね」
「絶対ヤダ。作れって言われても絶対やんないからな」
「パンプキンパイとかカボチャプリンもいいよねえ。お菓子のすーきなまーほうつかいっ」
「そんな歌もあったな、つか古くからの風習に倣ってやろうとしてるのにカタカナメニューって何か違くね?」
「じゃあ何作ってくれるの」
「だからそれを今考えてんだろ」
まあ、煮物とか天ぷらとかが無難っつーかなんつーか。ああ、ジャガイモの代わりみたくサラダっつーのも――って、カタカナメニューは違くねって自分で言っといてそれはおかしいな。
「ねえカズ」
「ん?」
「冬至とか1年の終わりには「ん」で終わるものを食べたらいいって書いてる。うどん食べたい」
「カボチャはどうした」
「カボチャとうどんを一緒に煮よう」
「一緒に煮るのは勘弁して。そしたら天ぷらうどんとかにするか」
「えっ、カボチャ丸々1コ天ぷらにするの?」
このまま慧梨夏にレシピ検索を任せていると、想像するのも恐ろしいことになりそうだ。最終的に闇鍋もビックリの魔女窯料理ができるんじゃないだろうな。
「俺がカボチャ嫌いだってわかってんのにカボチャ1コを消費出来るワケがない。俺らが使い切れなかった分は浅浦とかみなもさんにお裾分けでいいな」
「はあーい」
さてさて、何が出来るやら。
end.
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本当は昨日やりたかったお話だけど、まあ1日遅れたけど、その辺は融通をきかせてね。うん。ゆず湯だけに。
かぼちゃとうどん、ならほうとうみたいな感じになるのかな。それでもいっちーはカボチャを食べたくなさそうだし別枠に出来る天ぷらですね。
お菓子の好きな魔法使いの歌、パンプキンパイが食べたくてカボチャに魔法をかけたら爆発したとか焦げたとかそんなだったような。
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