エコメモSS

□NO.1201-1300
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■揉んで揉まれてキセイラッシュ

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 年末年始の施設解放時間はやや短くなるとは言え、この情報センターにそこまで需要があるとは思えん。正月の三箇日以外はしっかりと開くというのだから、まあ、年末年始もバイト漬けだ。

「春山さん、あなたは実家へ戻らなかったんですか」
「戻りたいに決まってるだろ」
「まあ、そうですよね」
「どいつもこいつも帰省するのでシフト入れませーんとか言ってくれちゃって、シメてやろうかと」

 お前は年末の帰省ラッシュには関係ないだろ、というだけの理由でオレの名前はほぼ毎日シフトに突っ込まれている。とは言えここにいても人が来るでもなく、ヒマだという以外にはない。
 帰省を理由にシフトに入れないと言ってきた面々に対する春山さんの愚痴がエスカレートしているのは、かじっている鉛筆の形が歪んできたことでわかる。私だって帰りたいんだぞ、と。

「そこらの連中と比べれば、春山さんが帰省にかかる時間も金も圧倒的ですからね」
「そうだろ! さすがリン、わかってくれるのはお前だけだ! 陸続きの連中は海を越えてから言えって思わないか」
「だからと言ってオレの名前をほぼ毎日突っ込む理由にはなりませんが」
「十分理由になるだろ、他に誰もいないんだから」
「そう言いながら、その右手はどこを触ってるんです?」
「それはお前、リンのプリケツだ。帰省を我慢してるんだからこれっくらいの褒美をくれてもいいだろ。男ならケツのひとつや二つ黙って差し出せ」

 人の尻を撫でたり鷲掴みしながらこの人はまだまだ愚痴を続ける。エリアの境をひとつしか越えないなら大学には出て来れるはずだと暴論混じりに。
 触られることに対しては、抵抗すればこの人の思う壺でしかない。エリアの境に関する暴論に対しては、ある程度までなら出て来いよとオレ自身も少しだけ賛同する。

「まあ、あなたが受付の場から離れているということは、ヒマなんですね」
「人が来たらビビるぞ」
「――と言いながら、痴女行為をエスカレートさせているその手は何ですか」
「大丈夫だ、私がいなければこの部屋のドアが外から開くことはない」
「どうやらあなたの存在に規制をかける必要がありますね。摘み出すぞ」

 あまりにエスカレートし過ぎたその行為には、そろそろ制止を。相変わらず尻をまさぐるその手を掴んでオレの体から引き剥がしてやれば、あからさまにしょんぼりとするのだから。
 この人がこうやって暇潰しに来るくらいなのだから、情報センター自体開放しなければいいのに、と思ってしまう。そうすればそもそものシフトがどうこうという問題も起きなかったのだから。

「春山さん、どうせヒマですし何か飲みますか」
「淹れてくれるのか?」
「受付に誰も来なければオレがここにいる意味もありませんし。書類仕事があるなら手伝いますよ」
「うあー、さすが次期バイトリーダーだー」
「それは聞かなかったことにしますけど」

 事務室に入ってしまえばさすがのこの人でも人の尻を触ることはしないだろうというのが甘い考えだったとしても、今現在利用者がいない以上ここにいても仕方がない。ネットサーフにも飽きたところだ。


end.


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星大の情報センターは年末年始も三箇日以外は開いているらしい。リン様も稼ぎ時か……本人の意思は関係なさそうだけどね!
そして春山さんの帰省ね。春山さんは北海道的エリアの出なんだけど、エリアの名前が決まらない。ネーミングなー。難しいよなー
春山さんの中では自分の後継を誰にするかというのはすでに決まってるのね! 次期バイトリーダーはキミに決めた!

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