エコメモSS

□NO.1501-1600
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■垣間見るカフェテリアの残像

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「なあ菜月、いつクレープも奢るっつった?」
「細かいことは気にするな」
「お前が言うな。高木、お前はどうすんだ」
「えっ」
「乗りかかった船っつーヤツだ。好きなの頼め」
「ありがとうございます」

 奥村先輩と夏合宿の打ち合わせをするために大学に来たら、図書館に来ていた高崎先輩とばったり会ってしまった。そこまではいいんだけど、何故か第2学食でサンデーでもという流れになったんだ。
 これが奥村先輩の雰囲気なのかな。高崎先輩が心なしか手も足も出ていない、ように見える。確かにサンデーは奢るということになっていたけど、事の発端は奥村先輩が間髪入れずに追加したクレープだ。

「あ、じゃあ、クレープじゃなくてたませんでもいいですか」
「たません1つ」

 3人分の飲み物とサンデー、それと各々のスナックの分の会計をポンと済ませる高崎先輩の立ち姿だ。そうこうしている間に、最初に頼んだ奥村先輩のクレープが出てきた。

「しかし緑ヶ丘は学食もオシャレだな」
「そうか?」
「向島にはクレープなんてないし、サンデーもカフェモカもない」
「向島の学食には何があるんですか?」
「こういう軽食だったらお好み焼きとかポテトとか」
「第1学食の2階みたいな感じか」

 高崎先輩のキャラメルバナナクレープと俺のたませんが出てきたところで、夏休みで閑散とした席に落ち着いた。奥村先輩はツナサラダクレープをかじってご機嫌な様子。
 奥村先輩は甘党と聞いていたし、野菜、特に葉物が苦手だという話をしていたからレタスが挟まれているツナサラダクレープというのは意外だったけど。それこそ高崎先輩と同じような、甘い物を頼むかと思ったから。

「クレープは甘いのも好きだけど、こういうサラダ系も嫌いじゃないぞ。物によるけど」
「こんなのでもねえとお前レタスなんか絶対食わねえだろ」
「そうだな。キャベツは火を通せば食べれるのもあるけどレタスはダメだ」
「あー、つーか偏食度合いで言ったらお前らトントンか」
「実際それで意気投合した感がある。班打ち合わせでファミレス行ったときもカルボナーラで揃ったし」

 たませんを食みながら、どこかいつもとは違う雰囲気の高崎先輩を見ていた。何て言うか、穏やか。状況にもよるのかもしれないけど、周りを威圧する空気のような物は薄れていた。
 奥村先輩にしても、いつものようにどこか張った雰囲気ではないように思えた。去年の対策委員で濃い時間を過ごしたという2人だから、再会すればそれなりに話は弾むのだろう。

「高木、たませんて何だ?」
「あ、えーと、見た目通りえびせんべいで玉子を挟んで、ソースで味付けしたものです。向島のローカルおやつだそうですよ。俺も果林先輩から教えてもらいました」
「玉子か。へー、おいしそうだなー」
「こっち見ても何も出ねえぞ」
「ちっ。悪い高木、一口」
「はい、いいですよ」

 たませんをかじって奥村先輩が一言。世の中にはまだまだうちの知らないおいしい物があるんだな、と。緑ヶ丘の学食はズルいという結論に達した先輩は、自費でたませんを買い足した。

「たませんうまー」
「菜月、一口」
「何でお前にやらなきゃいけないんだ」
「てめェ今日だって今までだって散々俺の金で食ってきただろうがこの野郎」
「仕方ないな」
「……高崎先輩、今までに何があったんですか…?」


end.


++++

おそらくは三井サンの次に菜月さんに集られているであろう高崎悠哉が例によって菜月さんにごちそうしてる話。クレープうまー
タカちゃんは果林に教えてもらったたませんがどうやらお気に召した様子。ソース系が好きということになってるからね!
高崎が頼んでいたクレープのはチョコバナナかキャラメルバナナか、とにかくあっまいの。高崎は甘いものが大好きだぞ!

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