エコメモSS

□NO.1701-1800
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■Surprise is as lightning

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「んー! ごろごろごろー」

 大きく伸びをしながら床を転がる菜月先輩の姿に確信する、これは結構酔いが回っているパターンのヤツだと。確かにここは先輩自身の部屋で、やりたい放題するには一番いいけどだなあ。

 野暮用で来ていた大学で偶然にも菜月先輩と出会った俺は、先輩の言うままご飯を食べに行き酒を飲み、そのまま先輩のお部屋で飲み直して現在に至っている。終電はなく、この部屋は陸の孤島。
 死人が出そうなナレーションだけど、この状況で死ぬのは間違いなく俺だ。転がるためにわざわざ机は壁に立てかけて部屋を広くとった。ごろごろと転がり回る先輩は薄着である。
 俺が菜月先輩に対して疚しい心を持たないと思われているのかは知らないけど、どうにもこうにもこの人は無防備過ぎないか! 疚しい心がないとは言い切らないぞ! それ以上に、ただ襲えないだけだ!

「あー、つかれた」
「それだけ激しく転がり回れば疲れもします」

 実家での菜月先輩は就職活動ならびにその準備のための活動でカツカツになられているのだろう。向島にいる今が束の間の休息と言えなくもなく、開放的になったとしてもおかしくはない。
 床に寝そべり、全く動かなくなってしまった菜月先輩をつついてみる。転がり回った所為か裾がめくれて若干見えているお腹は避けつつ、セクハラにもならないような場所を。

「菜月せんぱーい、意識はありますかー」
「こちょがしい」
「起きていらしたのですね。そろそろ寝ますか?」
「まーだー」

 くっそかわいい! ぐずる感じがくっそかわいい! この状況で一緒にいるのが俺じゃなかったら絶対に何かされてますからね、俺のヘタレさに感謝していただきたいですよ菜月先輩!
 そう言ってまだ煽ろうとしたチューハイの缶は取り上げた。これ以上酔われると何がどうなっても責任はとれないし、菜月先輩の財布に入っている不名誉なカードが再び発動しないとも限らない。

「菜月先輩、風邪をひいてしまいますのでお腹はしまってください」
「んー」
「腕が動かないのであれば失礼します」
「んー」
「あの、やっぱりそろそろ寝ましょうか? ねえ」
「んー」

 ――って、うええええっ!? ちょっ、えっ、それは…! それはダメなヤツです菜月先輩…! うつ伏せのまま、胡座を掻いた俺の太股を枕代わりに潜り込んできた先輩をどうして振り解けようか。
 何か、ちょうどフィットするんですかね。それとも普段から枕をそのように抱いているのか右手は左足に、左手は腰に回る。ダメだ、これは事件だ。戦え俺、頑張れ理性、鎮まれ煩悩!
 逆に言えば、菜月先輩が完全に眠ってさえくれればベッドに抱き上げることが出来るんだけど、中途半端に意識が残っていると振り解くにも解けない。さて、どうしたものか。

「菜月せんぱーい」
「んー」

 まだダメか。男の脚なんて柔らかくもないしそんなに寝心地がいいようなモンでもないだろうに。しかもうつ伏せで。電気も消してないから眩しいのが苦手な菜月先輩には無理もないだろうけど。
 でも、ここまで来ると気になるのは足の臭い大丈夫かなあとかズボン汚れてなかったっけとか、そんなようなこと。こうなるってわかってても問題だけど、わかってたらキレイにしとくんだった。


end.


++++

去年だかのノサ誕では菜月さんがストレス発散のための散財と称してノサカとご飯を食べに行った話をやったと思うのだけど、気持ちその後の話。
ノサカの理性はいつもながら感心するけど、決して疚しいことを思ったりしないワケではないとは一応言っておかねばならないだろう。そらノサカだって男の子よ。
ただ、結局ノサカが菜月さんをベッドに抱き上げることになるんだろうけどな! ホント、菜月さん好き勝手やりすぎだぜ…!

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