エコメモSS

□NO.1701-1800
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■瞳に滲む青い空

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「あっ、村井さーん!」
「げっ」
「何やってるんですかこんなところで!」
「バカ大石お前っ、空気読め!」

 大石はなー、いい子なんだけどなー。空気の読めなさで言ったら三井と同等かもしんねーなあ。星港の町なかだから誰かと会ってもしゃーないとは言え、めんどくさいのに捕まっちまったなあ。
 俺に対してしっぽ振るみたいにどうしたんですか何してるんですかって聞いてる姿、どっかで見たなあと思ったら野坂か(髪型も似てるし)。あそこまで堅苦しくもないけどコイツも十分先輩大好きっ子だよなあ。
 村井おじちゃん的には、後輩から慕われるのは悪い気はしない。むしろありがたい話ですよ。でもな、お前もPだったならもーちょっと状況を見ろってんだこのバカ犬!

「マー、お待たせー」
「おー」

 正直、俺は心底めんどくせーことになったと思ってますよ。よりによって大石だもんなー、今日はもうあーきらーめたっと。麻里と圭斗にはボロクソに言われるだろうけどしゃーない、大石だもんな。

「あっ、みちゃこさんもお久し振りですー」
「ちーは元気だったー?」
「はい!」

 みちゃここと能登美沙子とこの大石は同じ星大のサークルでそれはもう先輩後輩どころか姉弟なんじゃないかってくらいに仲がいいっつーのはインターフェイスの3・4年の間じゃ有名な話だ。
 そんなみちゃこと俺は1年の時からくっついたり別れたりを繰り返してるよーくわかんない間柄ですよ。今日だって何かがどうかなればヨリが戻るかもしれなかったけど、フラグ折られましたよね大石に!
 ただ、ここで会ったのが圭斗だったら悪意に満ちてただろうし伊東や石川だったら……うん、終了だね! そう考えると悪意がなくってちゃんと釘を刺せば言い触らす心配のない大石で良かったと言えなくもない。

「おい大石、お前今日のこと誰にも言うなよ」
「大丈夫ですよー」
「特に定例会の奴らには言うなよ! 圭斗とか圭斗とか伊東とかヒビキとか圭斗とかあっお前なら朝霞も危険だ」
「大丈夫ですって」
「風の噂で圭斗に伝わろうモンなら絶対麻里にも伝わるからな」
「マー、立ち話もアレだしどっか座れるトコ行こうよ」
「あー、そうだな」
「ちーも行こっ」

 ですよねー! あっはっは、あっはっは、さーすがみちゃこさんは出来た先輩だなー! あっはっは、おいちゃん何だか泣けてきたなー、感動してるのかなー!

「でもみちゃこさん村井さんとデートなんだから俺だけ除け者ですもん、今日はやめときます」
「えー、じゃあちーとは今度ご飯行くよー」
「はーい。村井さん頑張ってください! それじゃあまたー」
「大きなお世話だお前は最後まで!」

 空気を読んでくれたらしく帰ってくれた大石の背中にブンブンと手を振りつつ、これからのことを考える。とりあえず、どこか座れるところへ行くべきか。
 ただ、ひとつ気になったのは大石の表現だ。デートって言ったな。どういう意図で言ってんのかねえ。普段が普段だから俺も随分深く深く考える悪いクセがついてますわ。絶対麻里と圭斗の所為だ。

「なあみちゃこ」
「なに?」
「大石はどこまで知ってんだ?」
「全部言ってる」
「お前かー!」
「じゃあマーは誰にも言ってないの?」
「うっ。……スイマセン、麻里と圭斗には吐かされてます」
「ほら。マーの方が1人多いから今日ご飯奢りね」
「喜んでごちそうさせていただきます」


end.


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村井サンのあれこれ、言い換えると麻里さんと圭斗さんのメシウマな事案。村井サンとくっついたり離れたりの女性の存在は前々からあっためてました。
この2人がくっついたり別れたりするようになった経緯にはかの問題児の影があるとかないとか。いつか圭斗さんと麻里さんとでもやろう。
ちーちゃんはきっと甘えさせてくれる人にはガッツリ甘えちゃう感じで、ノサカとは違うベクトルの先輩大好きっ子。ちーちゃんとみちゃこさんの間に恋愛感情はこれっぽっちもないよ!

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