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□邪魔者は腹の中にいる
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 空はまだ明るいけれど、外灯や店の看板なんかは明かりが点き始めていた。この分だと割と余裕で入れそうだねと圭斗先輩は呟き、ウィンカーを出した。
 カチカチという音と共に左折して入ったのは、ステーキハウスの駐車場だ。「あの頃話」の聞ける率の高い、例の店。さっき菜月先輩が桃缶の歌を歌っていたのはこういうことか。

「ん、着いたよ」
「ありがと」
「ありがとうございました」

 車の外に出ると、生温い風が辺りを包んでいた。暑いというほどではなくなったけど、それでも気持ちいいかと言われれば、そうではない。

「すみません先輩方、お待たせしました」
「おうおせーぞ圭斗!」

 ステーキハウスの入り口の前にいらっしゃったのは、何と4年生の先輩方だ。村井サンと麻里さんもお変わりないようで。まさかこんな食事会だったのか…!
 と言うか、そもそもの疑問だけど3年生と4年生のお食事会に俺なんかが混ざっていてよろしいものか。と言うか、尋問不可避なこの状況で、どう……えっ? 俺はどうしたらいいんだ!

「相変わらず野坂は一人百面相が面白いね」
「麻里さん、お久しぶりです。この状況で俺はどうしたらいいのか純粋に悩んでいるところでして……」
「いつも通りで大丈夫だからね」

 そのように麻里さんは仰るけれど、いつも通りでいられる状況ではないのはお察しいただきたいところだ。どういつも通りでいろと言うのだ。

「マー、圭斗たち着いたー?」
「今着いたトコですよ」
「すみませんダイさん、遅くなりまして」
「いーのよいーのよ、この時間だったら道も混むっしょ」

 建物の影からひょっこりと姿を見せたのは、髪を柔く立てた細い釣り目の男性。身長も圭斗先輩より高いしガッチリ系。お会いしたことはあるはずだけど、挨拶をちゃんとしたことはないはずだ。
 村井サンのこの態度からすれば現4年生よりさらに上の先輩で、なおかつ俺が1年生の時の4年生でもないとすればさらに上の学年の先輩に違いないのだから、緊張するなと言う方が無理だ。

「野坂、改めて紹介するよ。この方は、水沢祐大さん。僕たちはみんなダイさんって呼んでるね。僕たちが1年生の時の4年生だ」
「あ、えーと。情報科学部情報メディア学科2年でミキサーの野坂雅史と申します」
「え、メディアなの!? 俺もメディア卒ー!」

 立ち話も難だし店の中に入ろうよと麻里さんが促し、いざ店内へ。ダイさんと村井サンがうきうきと先陣を切り、菜月先輩と麻里さんが女性同士仲睦まじくお話をされている。その後ろから俺と圭斗先輩が。

「ちなみにだけど野坂、ダイさんは麻里さんの彼氏でいらっしゃるから実物の記憶は曖昧でも名前くらいはよく聞くだろう」
「はい、そう言われるとそんな気がしました」
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