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□邪魔者は腹の中にいる
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 6人掛けのテーブルには、現役生と先輩方が向かい合うように座るお見合いスタイル。さてどれにしようかね、と先輩たちはメニューを広げてくれる。

「サラダバーつける人ー」
「まあ、全員ですよね」

 どれにしようかなー、と眺める肉のページ。菜月先輩は200グラムのグリルチキンに決まっているらしく、いつものというお顔をされている。
 圭斗先輩と麻里さんはさっぱり系だし、村井サンはごくごくスタンダードなハンバーグ。さて俺はどうするべきか。先輩方と歩調を合わせるべきかいつも通り、食べたいように食べに行くか。
 まあ、肉を遠慮したならサラダバーで補えばいいんだろうけど、車内で圭斗先輩からご注意が入ったことも思い出す。甘味だけではなくカレーや焼きそばだって食べたいじゃないか。

「俺はステーキの300ーっと」
「ダイさん行きますねー」
「野坂、お前はどうするんだい?」
「あ、えーと」
「いつも通りでいいってば、ダイなんか遠慮するような存在じゃないのに」
「お麻里様、事実ですが手厳しいです」
「ステーキバラエティの300で! ウインナーとエビフライも乗ってるとか素晴らしいではありませんか!」

 お前それいつも通りでいいって言ってもやりすぎだろ、という視線は主に菜月先輩と村井サンから。麻里さんは、野坂は若いねー元気だねーとお言葉をかけてくださる。
 圭斗先輩はダイさんにこれが現在のインターフェイスでよく見られる食糧戦争の肩慣らしですと説明を入れているのだけどこの場に果林がいるワケでもないのに戦争にはなりようがないかと。

「あっ、麻里さん何かサラダバー取ってきましょうか!」
「アタシサラダ食べたいけど、野菜嫌いの菜月さんがサラダなんて取れないでしょ。自分で行くから大丈夫だよ」
「あー、そうですね」

 菜月先輩が後輩をしている。何という可愛らしい光景だろうか。出来るなら俺はこのまま背景として下級生と化した3年生の先輩をずっと見ていたい。
 とは言え村井サンと圭斗先輩に関しては別に何ら変わらないヤツだし、と言うか村井サン相手になると俺もちょっとはっちゃけてしまうので麻里さんとダイさんに変な目で見られないように気をつけなくては。

「あっ、菜月先輩! 手が2本で桃が足りますか、よろしければお手伝いしましょうか」
「お前はうちを何だと思ってるんだ」
「野坂ー、それなら俺荷物番してるから焼きそばとポテト取って来てー」
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