エコメモSS

□NO.2201〜3100
570ページ/990ページ

■魔法のカルボナーラ

++++

 今日は夏合宿の打ち合わせ。それが行われているのは俺の部屋。インターネットと音楽を流せる環境というのが大事だったという体で。自分を含めて6人くらいだったら余裕で入れるし、遅刻の心配がないところもいい。

「机がないとキューシートを書くには少し不便だな」
「すみません」
「いや、その辺は生活にもよるし、いいんだけど」

 少し申し訳ないなと思うのは、部屋に机がないからみんな床にネタ帳やファイルを置いて文字を書いているところ。パソコンデスクはあるけどみんなで囲めるような物ではない。

「あー、お腹空いて全然ダメ! 集中力続かない!」
「果林、食料持ってきてないのか」
「タカちゃんの部屋だったらコンビニ近いからいつでも行けるかなって思ったんです! あーダメ、タカちゃんと言えばパスタ。カルボナーラ食べたい」
「パスタならありますよ」
「ウソっ! 作っていい!?」
「果林、それは抜け駆けじゃないか。カルボナーラだったらうちだって食べたいぞ」
「正直、作ってもらえるなら俺も食べたいです」

 流れとノリでみんなでご飯ということになったんだけど、6人分……果林先輩がいるから実際にはもっとのパスタはないし、そもそも、パスタソースもない。どちらにしてもコンビニかスーパーには行かなくちゃいけない。

「やァー、それだったら自分作りヤすよ。市販のパスタソースは高いンでテキトーに材料買って」
「えっ、りっちゃんそんなこと出来るの!?」
「自分、メニューにないメニューも作らされるサ店バイトなンす? 多少のムチャ振りならヨユーすわ。じャ、ちょっくら行ってきャーす」

 そう言って土田先輩は出かけてしまった。えっ、でもまさかカルボナーラを一から作るだなんてそんな。簡単そうに言うけど実際難しそう。伊東先輩だったら作れそうだけど、俺にはまず無理だからレトルト頼みなワケだし。
 みんな土田先輩のカルボナーラを楽しみにしているようで、ワクワクが止まらない。特に、俺とはカルボナーラの話で盛り上がった奥村先輩もそわそわしているようだ。温玉もほしいなあ、なんて言いながら。

「ただいまース。果林、ちょっと手伝ってくーださい」
「はーい。タカちゃん、塩どこ?」
「どこかにはあると思います。あっ、エイジに聞きましょうか」
「果林、キャビネットに付箋してありやスわ」
「あ、ホントだ。エージの字だねこれ」

 土田先輩と果林先輩が台所で調理している間、奥村先輩と1年生はババ抜きをして遊んでいた。その中にカルボナーラソースの匂いが漂ってくると、ついそっちに意識が向いて、お腹が空いてくるんだ。
 時折、台所から「あれはどこー」などと飛んでくる声には「どこかにはあると思います」と声を投げ返す。最近、台所にエイジが立つことも増えて土地勘がなくなってるんだよなあ。何がどこにあるのかさっぱり。

「さ、出来やシたー」
「本格的なカルボナーラじゃないか! ベーコンもケチってないし! すごいなりっちゃん」
「ちゃんと温玉もありヤすよ」
「くーっ、さすがりっちゃんわかってる」
「すいやせンが、果林以外からは一人300円いただきやーす」
「安っ」

 出てきたのは5人前のカルボナーラ。大きな皿はないから、フライパンにそのまま。そこから紙皿に取るスタイル。奥村先輩が言うように本格的だしベーコンもごろごろしてるしおいしそう。300円は安い。
 台所では果林先輩が引き続き調理をしていて、多分自分が食べる分のパスタを茹でているところ。果林先輩の食べる量ならきっと鍋ごと出てきてもおかしくない。

「んー、うまー。濃厚だ」
「りっちゃん先輩すごーい! 作り方教えて欲しいです!」
「じャ、後で口頭で教えヤすわ」
「ありがとうございまーす」
「でも青女だったらさとちゃんに聞いた方がいーんじゃないスか」
「正統派もいいんですけど、りっちゃん先輩みたいなサッと出来て美味しいのも知ってたいんです」
「一理ありヤす」
「簡単に出来るなら俺も聞いてみたいです」
「や、タカティはまず台所の把握ッしょ」

 しばらくして出てきた鍋ごとのカルボナーラにみんな度肝を抜かしたし、俺は片付けついでの台所の把握に忙しい。番組の打ち合わせもまあ出来たけど、今日の打ち合わせは班の結束を強くする意味合いの方が強かったのかな。班の雰囲気はとてもいい。

「じゃ、次の打ち合わせは――」
「この班でカラオケに行きたいです!」
「ユキちゃん、それは打ち合わせが終わってからね」
「果林、カラオケには行くンすね」
「なっち先輩の美声とタカちゃんのアレを久々に聞きたいなーと思って」


end.


++++

りっちゃんがカルボナーラを作ってくれるといいなあと思っただけのヤツでした。偶然にも律誕である。
例によってTKGが自分の部屋の台所で迷子になってるようなそんな感じの。バッサリ言ってくれるのはさすがのりっちゃんである。
果林も安定の食べっぷりだしね。鍋ごとのカルボナーラって。ユキちゃんリクエスト、4班のカラオケの光景もぜひやってみたいです

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ