エコメモSS

□NO.2201〜3100
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■お化けのベクトル

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 今年の夏は酷暑であるとしきりに言われていた中で、僕たち定例会は向舞祭のスタッフとして駆り出され、練習の日々を送っている。盆過ぎまでの辛抱だけど、それは果てしなく長い道。

「うー、暑いよー」
「だらしないぞ大石。まだまだこんなモンじゃないぞ」
「だって暑いんだもん! 陸の上だもん! 俺は朝霞とは違うんだもん! プールに行きたいよー、拷問だよー」
「ちーちゃん、暑いって言えてるうちは多分大丈夫。圭斗を見て。死んでるから」
「伊東、勝手に殺さないでくれるかい」
「でも、限りなく瀕死だな」
「うん。見るからにしんどそうだもん。圭斗、大丈夫?」

 テントでの休憩中、めでたく朝霞君に瀕死認定をいただいたところで僕は冷たいスポーツドリンクをちびちびといただくのだ。大石君と朝霞君は相変わらずぎゃあぎゃあと元気だし、何なんだお前らと思わずにはいられない。
 体が熱を持って、全身が火照っている。この夏は肌も例年になく焼けていることだろう。伊東はバイク焼けもあるんだろうけど腕なんかがすでに真っ黒。ヒビキはさすがに気にしているようで、肌も白い。大石君と朝霞君はまだ焼け方もそこまでではない気がする。

「朝霞何やってるのー?」
「日焼け止めを塗り直してるんだ」
「えー、朝霞クンの日焼け止めアタシ使ってるのよりいいヤツ!」
「朝霞、肌とか気にするの?」
「って言うか、焼けると体が熱を持って疲れやすくなるし、回復しないからな。疲労予防の意味で塗ってる。外から帰ったら日焼け止めを落として化粧水でケアするとさらにいいって聞いた。俺はお前みたいな体力お化けじゃないから小さなことから気を遣わないと」
「朝霞クン女子力高っ」

 どうやら、ステージの鬼はそういうところから気を遣っているらしい。よくよく考えれば体力お化けの方も結局は水中に還るんだし、やっぱり体にこもった熱をどうにかしないといけないということか。
 ヒビキも朝霞君の日焼け止めを借りて塗り直しているし、その使用感なんかを語り合う男女というのもまた異様な光景だ。僕はそれをただただボーッと眺めるだけ。休憩中にそこまで動く気力があるはずもなく。

「圭斗、お前今OS-1が美味く感じるんじゃないか?」
「例の、経口補水液かい?」
「マジで倒れる前に休んどいた方がいいぞ。倒れたら2〜3日は余裕で死ぬ」
「ん、まるで経験しましたと言わんばかりの語り口だね」
「実際今年はやらかしたんだ。悪いことは言わない。経験者からの忠告は聞いとけ」

 日焼け止めを塗り、帽子を被り直した朝霞君が目映い。朝霞君のパンツが白なのもそういうことなのだろう。それだけ気をつけていても熱中症になるときはなるんだから僕はもうどうしようもない。
 確かに僕は体力のない方ではあるけれど、それでも今年の夏は暑すぎる。それに炎天下の中で動くということがまず有り得ない。MCでこれだけ疲れるんだから、踊る方は死人が出るんじゃないかい?

「でも、これだけ動いたらお腹空いたなー。ご飯食べたいなー、焼き肉丼とか」
「お前ホント何でもかんでも丼にするよな」
「だってかきこみたいし楽なんだもん。朝霞が定食ばっかりなんだよ」
「噛まずにかきこんでたら体に負担がかかるぞ」
「朝霞って、別に健康オタクってワケじゃないよね?」
「健康オタクではないな」
「あー、ちーちゃんの話聞いてたら豚キムチとか食べたくなってきた! 今日の晩飯は豚キムチにしよーっと」
「あー! いいねカズ! 豚キムチ丼!」
「豚キムチには温玉だな」
「あっじゃあちーちゃんとカオルも一緒に食べる? でもうちじゃ遠いか」
「じゃあうちに来ればいいんじゃないか。星港市内だし」
「そっか! じゃあ晩飯はカオルん家でー」

 化け物3人が何か話しているよ。ここから練習をした後でご飯を食べるのかい? 意味が分からないよ。それとも、僕も日焼け止めを塗るところから始めればいいのかい?


end.


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定例会の向舞祭話はひたすら圭斗さんが死んでいるし、化け物3人がきゃいきゃい言ってるのがかわいいだけのヤツです。
この時期が来ると化け物たちをきゃっきゃさせたくなるのですが、つまりそれは圭斗さんが死にかけているということでもあり。今年は最終的に誰の食生活を真似するのやら。
日焼け止めを塗り塗りしてる朝霞Pである。さすがに鏡などは持ち合わせてないとは思うけど、日焼け止めを持ち歩いてるとかなんかもうアレよ

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