エコメモSS

□NO.2201〜3100
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■次点狙いのプロトタイプ

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「う、わ」

 負けてしまった。どうして俺はパーを出してしまったんだろうとか、何の罰ゲームがあるんだろうとか、いろいろなことが瞬時に渦巻く。目の前では、チョキを出した野坂先輩が勝利の雄叫びを上げている。はあ。いいなあ。

「それじゃあタカちゃんが最下位ということでー、1抜けのアタシが指令を出しちゃうよ! でもどうしよっかなー、野坂用のエグいのは、タカちゃんとなるとねー」
「いや果林お前俺だったらエグくてもいいのかよ」
「いいに決まってますよねー」
「果林先輩、お手柔らかにお願いします」

 今日はインターフェイスの1・2年飲み会。これからもよろしくお願いしますとかそういう体の集まりで、思った以上に人が来たなあって。飲みも盛り上がってきた頃に始まったのが、ジャンケン大会だった。
 ルールは簡単。1回目は全員でジャンケンをして、そこから勝ち残り戦と負け残り戦が行われていく。「一番最後まで負け残ってしまった人が、優勝した人の言うことを聞く」という罰ゲーム付き。
 勝ち残りの方では果林先輩が優勝を決めて、大会の行方は負け残りの結果に委ねられることになった。そして野坂先輩との一対一の勝負で負けてしまって現在に至る。どんな罰ゲームが飛び出るかわからないのが怖い。

「この中で、お化粧したタカちゃんに興味ある人ー!」
「ええっ!?」

 恐ろしいことに、これに「はーい」と声が揃ってしまうのだ。そしてインターフェイスの飲み会となると女子もいる。化粧道具なんかも完璧に揃っていくわけで。あれよあれよと俺は鏡の前に座らされ、女子の先輩に取り囲まれてしまった。
 果林先輩によって為す術もなく顔が作り替えられていく。眼鏡を外しているからあまりよくは見えないのがいいやら悪いやら。目元に触れられるのは、やっぱり少し怖い。そもそも、こんなに顔を触られることはそうそうないから。

「はーい、完成でーす」
「えー! タカティかわいいー!」
「てかタカティ何でスカート穿いてんの」
「厳密にはワイドパンツね。ちなみにパンツは直クンがここに来る前に買ってきたヤツを借りたよね」
「新品の物を俺が穿いて良かったんですかね」
「大丈夫。問題ないし、似合ってるよ」
「直クン先輩が王子様ならタカティは姫だ! 背も直クン先輩の方が高いし!」
「ユキちゃん、背のことには触れないであげて」
「ナ、ナンダッテー!? 直クンにエスコートされるのは俺の夢だというのに!」
「野坂、アンタはすっこんでようか!?」

 自分では恐ろしくて見られてないけど、評価が高いのもそれはそれでどうかと思う。と言うかいつまでこのままでいなくちゃいけないんだろうと思う。飲み会の勢いとは言えやっぱりちょっと恥ずかしいと言うか。

「あっ果林先輩」
「どしたのゲンゴロー」
「やっぱり髪を何とかした方がいいと思うんですよ。俺今ウィッグあるんでそれをかぶせてみましょうか」
「ちょっと待って何言ってんのゲンゴロー。やめましょう果林先輩」
「中途半端なコスプレってやっぱちょっと嫌だって言うか。タカティ、もう少しだけ完成度高めよう」
「高めなくていいよね? いやちょっと待ってホントねえゲンゴロー」

 恐らくはコスプレ用の道具だと思われるウィッグをかぶせられ、三度上がる歓声。肩より下に髪が垂れているのは変な感じがするし、何より重いしかゆいし。大体俺は被り物が好きじゃないのに。
 大体みんな満足したのかそれぞれの席に散って思い思いに食べたり飲んだり喋ったり。俺は果林先輩の前に正座をして、化粧を落としてもらっている。ワイドパンツは宮崎先輩に、ウィッグもゲンゴローに返した。

「ねえタカちゃん、学祭のミスコン出てみよっか。いい線行くと思うんだよね」
「ええー……伊東先輩が出るヤツですよね。同じサークルから2人はさすがに。それに身バレしたくないですし」
「優勝商品の機材カタログは超絶美少女のいっちー先輩が持ってくとして、高ピー先輩情報では準優勝の商品はお酒の詰め合わせらしいよね」
「やります」
「早っ!」
「酒代はバカにならないので取れるなら取りたいです」
「タカちゃん、さすがですよねー!」

 こうして、2位狙いの女装ミスコン戦線が始まった。もちろん、それに出るというのは身内にも内密に。今日この一次会が終われば、俺の部屋で開かれるのは飲み直しからの作戦会議。


end.


++++

大学祭の女装ミスコンにTKGが密かに出ていたというのはちょいちょい言われることですが、どのようにして出ることになったのかという話はやってないなあと
何かもういろんな子がいるから道具やら衣装やらが揃っちゃうんですよね……ゲンゴローがここに来るまでに買い物してたのもタカちゃん的には誤算。
何かもうアレ。タカりんうまーとかそんな感じのヤツ。果林の誕生日近いしそれくらいはやっていいよねえ

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