エコメモSS

□NO.2201〜3100
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■SHIKABANE UP and DOWN

++++

「ヒロ、こーたを見てどう思う」
「ウザい」
「そうじゃないだろ」
「ああ、しやった。えーとねえ」
「と言うかあなたたちは人の顔を見るなり何なんですか」

 ヒロが「語彙力を増やす訓練」というのを始めたらしい。夏合宿のモニターで高崎先輩から語彙力のなさを指摘されたっぽいスわ。それで野坂に協力要請をしたら、ちゃんとした練習メニューを持って来たっつーンすからさすがスわ。
 ちなみにヒロが今やっているのは言い換える練習というヤツで、「ウザい」という言葉について具体的に言及をするという物。こーたの何がウザいのか、具体的なポイントを言語化するというれっきとした訓練スね。

「えーと、自己管理のなっとらん単なるメタボなんに一部ではマスコット扱いされる意味が分からん」
「あと2つ」
「ウザい界のアイドルっていう意味が分からん」
「意味が分からんって2回言った」
「ホンマに!? えーと、ウザい界だろうとアイドルぶるんが気持ち悪い」
「それから」
「チェックの服ばっかで他に何かないんかなって思う」
「はい、これで3つだな」
「はー、言い換えって難しいわ」
「そうじゃないでしょうあなたたちは! 単なる悪口じゃないですか!」
「やァー、自分だッたらもっと言えヤすねェー」
「土田さんが出て来るとややこしくなるので今はご遠慮願いますよ!」

 語彙力を増やす訓練と称してヒロが自分の悪口を言うのにこーたが激怒してヤすわ。や、諸悪の根源はこーたを練習の題材にした野坂スね。
 野坂によれば、ヒロには発声も必要だけどそれはその気になれば機材で何とかなる。でもアナウンサーのソフト的な面はミキサーの腕ではどうしようもないからそれを優先する、とのこと。番組の中身スね。

「ヒロさんは比較的悪口が得意なんですから、語彙を増やすのであれば逆に褒めてみてはいかがです? 手始めに私など」
「こーたに褒めるトコないし難しすぎるわ」
「ナ、ナンデスッテー!? 私にだっていいところはありますよ!」
「こーた褒めるならノサカとりっちゃん褒めるわ。それでも難しいよ。MMPって先輩もみんな基本どーしようもないやん」

 どうやらヒロは意地でもこーたを褒めたくないらしい。何の恨みがあったワケでもないとは思うンすけど、多分ナチュラルなウザさと褒めたところでメリットがないっつーのが大きいスね。

「ナ、ナンダッテー!? ヒロの分際で菜月先輩と圭斗先輩をどうしようもないなんてよく言えたな!」
「野坂、それを言うとややこしくなりヤすわ。あと、あの人たちは結構しょーもないスよ」
「それはともかく土田さんに褒めるところなんてありましたかねえ、野坂さんならまだしも。ラブ&ピースと書いて抹殺を地で行く極悪非道の土田さんですよ?」

 おっとォ。自分にも飛び火して来やしたねェ。まア? 確かに自分の褒めるところを探すのは難しいスけど? それでもこーたに言われると無性に腹が立つンすわ。

「ほーん。こーた、爪と肉の間に針でも刺そうかなァー」
「拷問じゃないですか!」
「ヒロ、自分はいーンで野坂を褒めてみたらどースか?」

 ヒロから褒められるなんて裏がある気がして素直に受け止められない、と野坂がそわそわしている。余程日頃はヒロから酷い目に遭わされているのだろう、本能で身構えてしまっているらしい。ただ、今は裏もなければテスト期間でもない。単なる課題スからね。

「えーと、ノサカは毎回アホみたいな遅刻しても懲りんと遅刻し続ける神経の図太さがすごいやろ」
「……これって、褒められてはないよな」
「そースね」
「褒められてはないですね」
「あと、勉強に対する姿勢が気持ち悪いから成績もええんやと思う。テスト前とかもっと助けてくれればいーんに」
「ヒロ、それは褒めてないぞ!」
「何かひとつ悪口を挟まないと死ぬ病気なんですかね」
「ハハァー」
「えっと、ボクが好き放題したりこーやって練習するんに付き合ってくれたりするんはドMやと思う。アホなんやなあって」
「酷い目に遭わせてるという自覚があるならもう少し俺を思いやれ」
「ノサカがボクを思いやってくれれば解決やよ」
「何がだ!」

 何かひとつ悪口を挟まないと死ぬ病気かはともかく、それはそれでヒロの味っつーことなンすかね。ああ言えばこう言うが成立するのはある種の語彙力の成果とも言えなくもないスわ。
 泣いても笑っても喚いても、ヒロがMMP1・2年で唯一のアナウンサー。ムラっ気のあるヒロがやる気になっているうちに、少しでも練習に付き合うのは悪くないスね。ただ、そこにいくつ屍が積み重ねられるか、っつー問題スわ。


end.


++++

ヒロのやる気がまだ続いているようです。何が起こってそんなことになってるんだろうなあ……
いよいよノサカだけでなくMMPの2年生をも巻き込みはじめました。ただ、神崎は悪口を言われてるだけなのでかわいそうですね
りっちゃんはやっぱり所々でサクッと茶々を入れてくれるといいよ!

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