エコメモSS

□NO.2201〜3100
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■ふいんきぱぱぱやー

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 無制限飲みの午前2時。先輩たちはみんな寝ちゃってて、静かだなあということを改めて実感する時間帯。寝落ちる前のいっちー先輩が作っておいてくれたご飯とお酒で食い繋ぐことになる。

「果林先輩、元気ですか?」
「バリバリ。タカちゃんは?」
「元気です」

 今日はアタシの誕生日を祝ってくれるっていう体の無制限飲みが開催されていた。会場はいっちー先輩の部屋。無制限飲みは食べるのも飲むのも、時間も無制限で行われるMBCC流の宅飲みのこと。
 せっかくだしMBCC流のオクトーバーフェストも兼ねようということで、ジャガイモ料理がふんだんに振る舞われた。タカちゃんが大量にもらってくれたジャガイモちゃんたちは煮てよし焼いてよし揚げてよしで本当に美味しかったなあ。
 夜に弱い高ピー先輩と、お酒に弱いいっちー先輩は大体日付を跨いで少しした頃に寝てしまう。それからは起きてる面々できゃっきゃと飲んでるんだけど、それでも次第にみんな落ちていく。最後まで残っているのはいつだってアタシとタカちゃんだ。

「タカちゃん、2人になったし……やる?」
「そうですね、お願いします」

 冷蔵庫から取り出したのは、缶ビール。オクトーバーフェストと言うからには、と高ピー先輩が気合いを入れて用意した物を拝借。ちなみにちゃんと許可は取ってます。
 タカちゃんは酒豪ゾーンのMBCCの中でも指折りの強さを誇る。だけど、ビールだけは好き嫌いとは別にどうにもこうにも相性がよろしくないようで。興味があるなら練習したらどうかなと現在に至る。

「それじゃ、かんぱーい」
「乾杯」

 電子レンジで温め直したイモチーズもちとウインナーをつまみに乾杯。タカちゃんは恐る恐るという様子で少しずつ、ちびちびとビールを喉に流し込んでいく。

「タカちゃん、勢いよく行った方がいいよ」
「勢いですか」
「ちびちび飲むような物じゃないしね。タカちゃん普段がウィスキーとかだからちょっとアレかもだけど」
「それじゃあ、行きます」
「いよっ」

 大きく喉を開いて、グビグビと一口、また一口と。そして合間にウインナーを。これはれっきとした練習。タカちゃんがビールに慣れるための第一歩。ま、まあ……今は実年齢のことはナシで!

「美味しいかどうかはまだちょっとわかりませんね」
「その辺はこれからだね。基本雰囲気だし」
「雰囲気ですか」
「そう、雰囲気」
「ふいんき。ふふっ」

 あっ、なるほど。タカちゃんがちょっと怪しくなってきたぞ。そしてまたビールを飲んで、おつまみを挟んでまた飲んで。やっぱ夜行性だからかこの時間になっても食べるなあ。ううん、普段贅沢しないからかも。食べれるうちに食べとけ的な。

「果林先輩の、ほっぺたがー、前から気になっててー」
「触る?」
「失礼しますー。うわっ。やーらかいです」
「それじゃ、アタシも。それっ」
「うわっ」
「うわー、皮しかない。伸びるなあ!」
「先輩だって伸びるじゃないですかー」

 どっちの伸び方がどうだーなんて言いながら、向かい合ってむにむにとほっぺたを引っ張り合うだけの遊び。もちろん、普段だったらタカちゃんが曲がりなりにも先輩のほっぺたを引っ張るようなことはしないと思う。ビールパワーすごい。

「タカちゃん、気分はどう?」
「ふあふあします。楽しいです」
「アタシもウィスキーの練習しようかな」
「しましょう、しましょう。飲みましょう先輩」
「よーしタカちゃん注いで。今日の主役一応アタシだし接待よ接待」
「おめでとうございまーす」
「どうもありがとー、はいストーップ!」
「まだいけますよー」
「多くないかな!」
「じゃあ俺が飲みまーす」

 やっぱり、相性ってあるのかな。ビールを除けばMBCCで一番強いタカちゃんが、ちょっとビールを飲んだだけで何かキャラ崩壊してるし。これはこれで楽しいし可愛いんだけどさ。
 確かに、こんな姿を3年生の先輩に見せるワケにはいかないか。タカちゃんが無制限で3年生の先輩たちが寝落ちた後に練習したいって言ってきた理由がわかったような気がする。確かにこれはダメだわ、ネタすぎてダメ! 面白い!

「クーッ、キッツい。タカちゃんよくこんなの飲んでるね」
「えっ、普通ですけど」
「ですよねー」
「あっ、もしかしたら、ビールとウィスキーを混ぜたら美味しい?」
「ちょっと待ってタカちゃんお姉さんそれはどうかと思うなあ!」
「一緒に飲みましょうよー、やりましょうよー、それーっ」
「あーホントにやっちゃった!」


end.


++++

タカりんがきゃっきゃしてるだけのヤツ。3年生に見られてたらお前らさっさと付き合えよって煽られてたに違いない
果林の誕生日は厳密には昨日だったのですが、バイトの都合やら週末だしーという都合で今日になった模様
ミドリから大量に分けてもらったジャガイモはどれくらい消費できたのだろうか……

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