エコメモSS

□NO.2201〜3100
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■フォローミー・フォローユー

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「ゲンゴロー、ちょっとSEの入りが遅いかも〜。つばちゃん、さっきのタイミングでケーブルが泳いじゃってる〜」

 朝霞サンが別件でこっちに顔を出せないでいる間、練習は洋平を中心に行っている。朝霞サンがいないから、内容がどうこうと言うよりはアナウンサーとの連携練習。それと、ゲンゴローにミキサーの実践練習をさせるのがメイン。
 何か、3年生が言うにはクソ日高は必修残してるとかアホとかバカとかでテストがカツカツ。練習は奴がいない間にやろうって作戦。今も洋平がサクッと機材使いま〜すって取ってくれて、難しいところを重点的にやってる。

「ケーブル泳いだのは確かにゴメンだけど、アンタの動きも大概だってことは言っとくからね、洋平センパイ」
「ごめ〜ん。でも、丸の池なら25メートルくらいは見とかなきゃデショ?」
「だからって、アンタの動きに対応するためだけにわざわざウチの班のときだけ自前で用意した30メートルケーブルに変えるって、相当なワガママだからね!」
「しょうがないでしょ、だって俺ってステージスターだし〜。10メートルじゃ足りないよね〜」
「ステージスターならそれを足りるようにしろ」

 ステージ上でアナウンサーが動くとき、マイクのケーブルを密かに捌くのはディレクターの仕事。ケーブルがバタバタになると危ないし、見栄えが悪いし、進行にも支障が出てくるし。かといってDが目立ちすぎてもいけない。
 いかに目立たず、美しく、そして後から片付けやすくケーブルを捌くかってところが腕の見せ所。だけど、洋平はアホみたいにステージ上で動くから、使うケーブルの長さも他の班の倍以上。ちなみにそれはアタシがバイト先からもらってきたヤツ。

「つばめ先輩、SEの入りを早くするにはどうしたらいいですか?」
「うーん、そうだね。ゲームでも何でもボタン押してからのタイムラグってあるっしょ? 気持ち早めに目押しするくらいの感覚。SEにもアタマに多少のブランクってあるし。ちょっとやってみようか。アタシがはいって言ったらカットインで」

 今年はアタシも人に物を教える立場だ。アタシがゲンゴローをステージをやれるレベルにまで持ってってあげないといけない。去年はこっしーがステージのことやディレクターの仕事のことを教えてくれて、それを聞きながらの練習だった。
 アタシの動きが甘いって朝霞サンがガーガー言うのをフォローしてくれたり、最初はしんどかった洋平のケーブルを捌くコツを教えてくれたり。壇上にいるアナウンサーや下で見るPの心理なんかも聞かせてくれたっけ。

「悪い、遅くなった」
「あっ、朝霞クンおかえり〜。どうだった?」
「宇部に託した。山口、そっちはどうだ」
「今はミキサー的に難しいところを中心にやってて〜、つばちゃんがSEの入りのタイミングをみっちり見てくれてるところ」
「そうか。じゃあ残り時間もそのままミキサーの練習を重点的にやるぞ。戸田、1回見たい。やれるか?」
「ゲンゴロー、やれる?」
「やります」

 朝霞サンが別件から帰ってきた。朝霞サンが来るとやっぱり一本芯が入る気がする。今日はそのままミキサーの練習を続けることになったところで、まずは練習の成果を見てもらうことに。
 実際に、場所以外は本番と同じ状況で。アタシも無駄に長いケーブルを捌くし、洋平も無駄にバタバタと動き回る。その洋平の動きや進行を見ながら、ゲンゴローはタイミングを取っていく。
 洋平のポージングに合わせてシャキーンという効果音。しっかり入った。朝霞サンの様子をチラリと窺うと、悪くない反応。よし、決まった。今までで一番いい。もしかしてゲンゴローって本番に強いタイプか?

「源、今の感覚を忘れるなよ」
「はいっ!」
「他に、ミキサー的に難しいのはどこだ?」
「ええと――」

 洋平が無駄に広げたケーブルを巻きながら、残りの20分が過ぎた後のことを考える。ミキサー的にはどんな練習をすれば良いやら。あーあ、どっかに使ってないミキサー転がってないかなー。


end.


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使ってないミキサーが転がっている大学ならあるものの、星ヶ丘にその知らせは現時点では届かないようです。
去年はつばちゃんも越谷班に来たばっかりだったのにいきなりDとしてわーって動いてりゃそら大変よ。現役のこっしーさんてどんな感じだったんだろう
って言うか朝霞班は自前でケーブル用意してんのかw ……うん、まあ、洋平ちゃんわーって動くからね、仕方ないね

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