エコメモSS

□NO.3101-
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■そんな類の友を呼びたい

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「アオ、ちゃんと食べてる?」
「はい。程良く食べてます」
「高崎サンの所為で食べらんなかったら言うんだよ」
「おいつばめ、人聞きが悪くねえか」
「あのねえ、さっきからアタシ高崎サンに強奪されてばっかであんま食べれてないの! ここからここはアタシのゾーンだからね、侵攻してこないでよね! まったく、せっかく果林と野坂がいないと思ったのに」
「てめェが隙だらけなんじゃねえか」

 インターフェイスの夏合宿参加者を対象にした打ち上げというものに呼ばれたので、久々にこういう催しに参加してみる。俺や高崎は合宿の最後に行われる番組のモニター会に出席した縁で声がかかった。今回の打ち上げは焼き肉の食べ放題。いかにも今の対策委員らしい、食を重視した会なんだろう。
 席順は参加費と交換するクジで決まるそうだけど、俺と高崎は喫煙者という事情で換気扇の下の席に着かせてもらうことになった。一緒に網を囲むのはくじ引きで集まった戸田さんとアオだ。正直、この席順にはとても安心している。如何せん俺は幽霊部員なだけに、知らない奴の方が圧倒的に多い。知っている人しかいない席、最高だ。
 特に、アオに関しては俺がUHBCに連れてきたような物だし、高崎の高校時代の後輩らしい。互いに遠慮も何もない。戸田さんはこういう感じの性格だから、俺たち先輩に対して過剰に気を使ってくることもないのが逆にこっちもやりやすい。そういうのが気になる奴もいるだろうけど、少なくとも俺と高崎はそういうのを気にしない。

「確かに、千葉さんと野坂君ばかりが食糧戦争の火種みたいに言われるけど、高崎も大概だからな」
「でしょ!? 3年生は3年生飲み会とかやんないんですか? やってたら高崎サンが場の食べ物食べ尽くすんじゃないです?」
「ウチの学年は2年生みたく頻繁に集まらないからね。やるとしても山口が言ってこないことにはって感じ。なあ高崎」
「だな。あっ、でも何か今度やろうみたいなこと言ってたらしいじゃねえか」
「そうか。まあ、何にせよ山口待ちみたいな感じ」
「へー、3年生は基本洋平が幹事なんだね」
「酒の席はアイツに任せとけば間違いねえ。宅飲みの伊東、店飲みの山口ってな」
「あと、3年で食糧戦争を起こすとすればコイツと大石かな」
「大石先輩は本当によく食べますね。サークル室のお菓子が湿気る前になくなりますし」
「つか3年の場合は食いモンどうこうより酒癖悪い奴らの方が問題だろ」
「間違いない」

 そんな話を聞きながら、高崎と戸田さんは延々とビールを煽っているし、アオは淡々と肉を食む。俺はと言えば、どんなメニューがあるかなと、次に食べる物を探しているような感じだ。はー、石川クンの顔も最小限でいいし、何も気兼ねしなくていい席で好き勝手出来るの最高。今日はそれだけでも来て良かった。
 周りの様子を見れば、初対面の人ばかりでぎこちない席や、同じ学校の面々ばかりが集まって好き放題やっているところなど、いろいろだ。もう少し時間が深まってくると程良くみんな出来上がってきて、目も当てられない奴なんかも出てくるだろうか。その処理をどうするかが対策委員の腕の見せ所だろう。

「3年生て酒癖悪い人多いんです? まあ、ウチにも1人いますけど」
「まずパッと思いつくだけでもクソ弱くて性質悪いのが4人。伊東、菜月、三井、朝霞だな」
「ですよねー! やっぱ朝霞サンやらかしてんだ」
「まあ、言ってアイツは毎回いるワケじゃねえし、最悪山口に投げれるからラクっちゃラクだ。俺に実害があってめんどくせえのが伊東と菜月。その2人は俺に害があるだけだから他の連中は笑って見てればいいだけだが、三井は全体に迷惑がかかってめんどくせえことこの上ない」
「うわ、出たよ」
「彼は過去に星大のサークルに遊びに来て、ラムレーズンアイスを食べて酔って帰れなくなったということがあったな」
「ええ……それは引きます。三井さんがUHBCで要警戒人物として周知されてるのはその出来事も踏まえてなんですね」
「彼はね、本当にUHBCの人にいろいろやらかしてるんだよ」

 さて、噂の奥村さんは……っと。野坂君と一緒に肉を焼いているようだ。3年会の時は高崎だけど、インターフェイス全体の会になると彼女が絡む先が高崎または野坂君という風に選択肢が出来るようだ。実に牧歌的な光景だし、美奈がいたら愛玩動物を見るような目で愛でていたことだろう。

「でも、今の1、2年は大人しいっつーか、あんま派手にやらかさねえな」
「あー、そーですね。弱い人が無茶しないってのもデカいですね」
「酒の場では本来そうあるべきだけどね」
「でも、こういう場では俺と同じレベルでガンガンイケる奴もいねえかなって思う。俺ばっか飲んでんじゃねえかって思いがないこともない。まあ、個人差があるのはわかるんだけどよ」
「高崎先輩と同じレベルを求めると、それこそ緑ヶ丘の精鋭しかいないですよ」
「アオ、高崎とプライベートで飲んだことあるのか?」
「高校の時に行事の打ち上げで」
「仮にも生徒会が何やってんだ」

 どうやら、この平和的な焼き肉程度では高崎には刺激が足りなかったらしい。食糧戦争の血生臭さも、酒癖の悪さに起因する荒れ放題の場も、飲み会の空気として奴はそれなりに楽しんでいたようだ。

「高崎サン、刺激が足りない? アタシがいるじゃないですか〜」
「おっ、そしたらつばめ、次ピッチャー頼むか?」
「頼むでしょでしょ〜。る〜び〜の銘柄でこの店にゴーサイン出したのアタシよ? 飲まなきゃ損損〜ってか? 肉とる〜び〜とアタシよ?」
「そうこなくちゃよ。えっと、ビールピッチャーとカルーアと適当な肉15皿くらいと、ライス(大)と、他何か欲しい奴」
「梅酒ロック」
「ピリ辛キュウリも食べましょ高崎サン」
「高崎先輩、お肉の中にレバーとホルモンもお願いします」
「よし。じゃあ頼むか」

 まだまだ宴は中盤に差し掛かる頃。場がどう盛り上がり、どう荒れ、どう掻き回されるのか。それを輪の外から眺めるのが楽しみだ。

「そうだ戸田さん、高崎はこんな風に言ってるけど、コイツも大体二次会に行くと眠いだの何だのと物言わぬ塊になってだな」
「ほうほう」
「おいこのクソ性悪野郎、余計な事言ってんじゃねえぞ」
「ガラスのハートはおねむの時間も早いんでちゅか〜? てめェの睡魔くらいてめェでコントロールしやがれ。野郎を担がされる身にもなれや三年寝太郎が」


end.


++++

最近やたらラジオで某曲が流れていたので肉とる〜び〜とアタシ回です。兄さん視点ですが。今年度はIF3年会やりたい。
イシカー兄さんは対外的には好青年をやっているけれど、慈善事業でやっているワケではないのでずっとだとさすがに疲れるらしい。猫被る必要ないの最高。
兄さん卓にいて気兼ねないのは誰かなと考えた結果、やっぱり蒼希だったね。高崎もいるしね。他の卓はどんな感じなんだろか。

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