エコメモSS

□NO.3101-
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■冬がしんどい丸まろう

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「1人暮らしの家の鍋って、カセットコンロに土鍋が普通なんだと思ってたけど、こういうのもあるんだね」
「これ、大学祭の時にサークルで使うからって買ってって頼まれてさ」
「でもこれ1台でたこ焼きの穴とホットプレートの板と鍋がついてて便利だっていう」

 今日はインターフェイスの1年男子会が開催されている。俺の部屋に集まってお鍋でもやろうかーって。向島でも少しずつ寒くなって来てるし、たまにはこういうのもいいよねって。だってさすがに12月、地元ほど雪が降らないとは言えビル風が意外とあるんだよね、星港って。
 普段はローテーブルとして使っている丸い机もこたつとしての機能を使い始めた。四角い安いこたつもあるけどこれは丸いところがいいなあと思って、それがこだわりでもある。こたつ布団もかわいい柄がいいなあと思って、緑基調のパッチワーク風のヤツにした。これが中綿がもこもこしててあったかいんだ。
 で、ここで使ってる鍋ね。確かにタカティが言うようにカセットコンロに土鍋っていうのが学生の一人暮らしとしてはよくあるみたい。だけど俺はUHBCの都合で買うことになったグリル鍋を今回の鍋にも使わせてもらってる。って言うかサークル費で補助するからミドリが家で使ってーって言われたんだよね。

「星大さんて学祭で何やってたの?」
「ホットケーキの生地をベビーカステラみたいにしてたんだー。この鍋、たこ焼き器としても使えるから」
「へー、おやつを作ってたんだね」
「うん。星ヶ丘は?」
「ウチはステージだけだから、他の大学さんみたく模擬店みたいなことはやってないんだ」
「あー、そうなんだ。さすが星ヶ丘だなあ」
「風の噂で緑ヶ丘が凄かったとは聞いたよ」
「ウチは学祭全体の最優秀ブース賞をもらったっていう!」
「エイジが責任者だったんだ」
「えー! 凄いじゃんエージ!」
「……っつってもほとんど売り子と準ミスターの力だろっていう」
「味が美味しかったってことにしようよ、俺たち試作頑張ったじゃない」
「それはそうだけど、売り子に言われると哀しさしかないっていう」

 何でも、緑ヶ丘の焼きそばブースは学祭の目玉イベントだった女装ミスコンで見事グランプリを獲得したカズ先輩と、準グランプリだったタカティが売り子を担当していて、さらに凄いのは緑大のミスターコンテストで準ミスターになった高崎先輩が延々と焼きそばを焼いてたんだって。
 その字面だけ見てても凄かったんだなーっていうのはわかる。って言うか、タカティが女装することになったのってインターフェイスの1、2年生飲み会でじゃんけん大会に負けたからだったよね……それがどうしてそんな話にまで発展したのかって、怖すぎるよね。
 星ヶ丘は活動の本丸であるステージを中心にやってたみたい。ゲンゴローの話によれば、それ以外のことはあんまりやってなくて、あんまり遊び歩いたような記憶もないって。だから模擬店とか、イベントとか、そういうのとはほとんど無縁だったみたい。それだけ本格的なステージだったのかな。

「でも、こないだインターフェイスの焼肉で、今日は4人で鍋って結構な頻度で会っちゃってるよね」
「まーそれも冬だからっつーことにしとくべ」
「うんうん」
「あれっ、でも今が日曜日の夜じゃん、エージ明日大丈夫?」
「ああ、高木ン家に泊まるから大丈夫だべ。最初からそれを見越してミドリん家に来る前にコイツの家に教科書置いて来てる」
「俺もエイジにいてもらったほうが、月曜1限の英語に間に合うから喜んで泊まってもらってるよね」
「その手があったかー!」
「ミドリ、お前それどっちに対する気付きだっていう」
「あ、えっと」
「朝辛いよね、寒いし」
「あははー……そうなんだよねー……」
「はーっ……どいつもこいつも」

 タカティはいざとなればその手段が使えるからいいよなあと本当に思う。俺は朝に弱いって言うか寝ても疲れが取れないって言うか、とにかく睡眠の質が良くないっぽくて、とにかくだらだらと起きられなくって。起こしてくれる人がいるのは羨ましい。
 何とか授業には出続けられているけど、本当にギリギリまでバタバタしてて。でも、割と真面目に大学でバイトしてて良かったなとは思う。バイトがあるから大学に行かなきゃっていう意識で起きられる日も正直あるから。先輩たちが怖くて良かったと思うのはその点かな。あっ今のは内緒で。

「ま、鍋食ってあったかい間に布団にくるまっちまえっていう。1人暮らしだと風呂に入る機会が少ない分体も冷えて良くないべ」
「そうだよねー。やっぱりぽかぽかしてた方が睡眠の質は上がるよねー」
「睡眠のことだったら高崎先輩に聞けばいろいろ教えてもらえるかなあ」
「そうだ、お前も聞いとけ。いや、あの人は寝ることと寝具の扱いに特化してるだけで、すっきりとした目覚めがどうとかって人じゃないっていう」
「あっ、ゲンゴローは朝には強い方? 弱い方?」
「俺は普通かなあ。深夜アニメをオンタイムで見ることもあるけど、眠い日は素直に録画したのを朝から見たりするし、日曜日は普通に朝から見るし。もしかしたら日曜日が一番健全な生活をしてるかも」
「えっすごい」
「アニメに限った話じゃないけど、漫画でも舞台でも、その作品をちゃんと見ようと思うなら体調管理は大事だよ」
「ゲンゴローって健全なオタクなんだね」
「オタクに対する考え方がちょっと変わったべ。つかコイツの不健康な生活を見てたらゲンゴローの生活が眩しく見える」
「えっ、俺ってそんなにヒドイ?」
「酷いなんてモンじゃないべ!」

 ……俺の生活はエージに内緒にしておこう。別に何をしてるワケでもないんだけど、何をしてるワケでもないからどう時間が過ぎてるのかが自分でもよくわかってない。でも、インターネットで世界の建築とかいろいろ見てたらあっと言う間に深夜だもんなあ。起きれないワケだよね。

「って言うか、1限が9時からっていうのがまず早すぎると思わない?」
「ホントに」
「通学に45分しかかからないクセに何言ってやがんだっていう!」
「それはエイジの家が遠すぎるだけじゃない!」


end.


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IF1年男子がまったりしてるだけのお話。ミドリ宅のたこ焼き器が時代を経てグリル鍋へと進化を遂げました。
別に鍋をやってる必要性はそこまでなく、単純に世間話をしていてほしかっただけのお話なので内容は特にない。
この4人だったらエイジとゲンゴローが健全な感じの生活をしてて、タカミドが残念な感じなのかしら。ミドリ、バイト先がアレでよかったな

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