エコメモSS

□NO.3101-
614ページ/742ページ

■give the real value

++++

「えっと、ルーズリーフC罫、ボールペンの芯、それから……」
「大学ノート、ホワイトボードマーカー、ストック用MDにーっとくらァ」

 りっちゃんと一緒に購買でお買物中。欲しいものをどんどんカゴにぶち込んで、お会計はいくらになるかななんて計算しながらの買い物。ただ、今回の買い物はうちの私物やその他のおつかい、それからサークルで使う備品なども一緒くたに会計することになっている。
 カランカランと場に鳴り響く鐘の音。12月に入ってから、購買ではガラポン大抽選会が開催されているのだ。会計1000円で1回抽選会の券がもらえるというわかりやすいシステムで、狙いは当然上位の景品だ。まあここでね、6等のうまい棒なんてね、要らないんですよ。縁起でもない。

「あっそうだりっちゃん、うちCDの受け取りもあるんだ」
「CDスか? 菜月先輩、いつもオンラインで自宅配送じゃないスか。わざわざ購買で注文したンすか」
「全ては抽選会の確率を上げるためだ。強いて言えば購買でCDを予約すると2割引きになる分抽選会の券がな」
「普段はその恩恵がありがたいンすけどねェー」
「そういうことだから、ちょっとうちの買い物も持ってて」
「はーい」

 すべては抽選会の確率を上げるため。まあ、CDに割引がかかってしまっている所為で精々2500円くらいにしかならなかったのが残念だけど。その他の買い物も込みでうちの買い物は4000円くらいにはなるだろうか。それにサークルの買い物を含めてお会計だ。

「菜月先輩、抽選会の券は6枚スわ」
「よーし、回すぞ!」
「Switch当たるといーすねー」
「そう、狙いは2等の大人気ゲーム機のみ! お願いしまーす」

 今回の抽選会の景品は、1等が某有名テーマパークペアチケット、2等が大人気ゲーム機、3等が緑風産コシヒカリ5キロ、4等が購買で使える文房具2000円分チケット、5等が学食で使える1000円分の金券、6等はうまい棒だ。
 もちろん一番狙いは大人気ゲーム機……と言うか書いてあるイラスト的には明らかにニンテンドースイッチなんだけど、まあ、大人気ゲーム機だな。次当たるなら文房具チケットがいいかな。学生だし、いつかは絶対使うから。あと、学食の金券があれば2、3日はこれでイケるだろう。
 某有名テーマパークペアチケットは、絶対に要らないから金券ショップに売るくらいしか使い道がないし、緑風産コシヒカリは実家から送って来る上にうちはそこまでご飯を食べないから需要がない。うまい棒は所謂粗品なので、これを欲しいと言うのも違うだろう。
 ガラポンのハンドルを握り、1回入魂。コロンと音を立てて出て来たのは、白い玉。白に用事はないんだ。あと5回。もう1回。そーれ。コロン。黄色だ。えーと、黄色は……おお、学食の金券。これはちょっと嬉しい。あと4回、徐々に運を上げて行こう。

「菜月先輩がんばれース」
「りっちゃんも回す?」
「や、自分は遠慮しヤす。菜月先輩がどーぞ」
「それじゃあ、引き続き」
「なっつーきっ、なっつーきっ」
「……あの、りっちゃん、コールは恥ずかしいからやめてくれ」
「サーセン」

 コロンと緑の玉が出る。すると、カランカランと大きな鐘の音。

「やったか!?」
「おめでとうございまーす! 3等、緑風産コシヒカリ5キロ当たりでーす!」
「ええー……」
「菜月先輩、不服そうスね」
「実家から10キロ送って来たばっかりだしな。米かー……」
「まあ、徐々に上げて来てヤすし、あと3回でSwitchも当たりヤせんかネ」

 当たりませんでした!
 ――というワケで、結構な量の買い物と米を携えサークル室へと戻ると、圭斗はじめMMPメンバーがお帰りなさいとうちらを囲む。だけど、最も欲しかったゲーム機が当たらなかった時点で今回の抽選会は敗北だ。米なんかどうすればいいんだ。そして戦果報告が始まる。

「――というワケで米5キロが最上位っシたわ」
「あーもー、Switch欲しかったのに!」
「ところで菜月さん」
「何だ」
「菜月さんが抽選会に行っている間、こっちで言っていたことなんだけどね。もしゲーム機が当たってしまったら菜月さんの引き籠もりに拍車がかかってそれはもう残念なことになるだろうねと」
「ウルサイな」
「で、この米5キロに関してだけども」
「本っ当にどうしようか困ってる」
「ん、カレーパーティーの時間じゃないかい? 米1合は大体150グラム。カレーパーティーなら1人1合くらいは食べるだろうから8をかけて、1.2キロくらいは消費出来る計算になるね」
「ああ……つまり、サークルの財産と言うか、サークルの食料として寄贈するみたいなことか?」
「そうだね。おでんか鍋か知らないけど、何らかの大会も開催予定だろう? 消費する機会はあると思うんだよ」

 確かに、サークルの買い物で得た抽選券で米をもらったことにすればサークルで共有する米とするのはすんなりいく。カレーパーティーであれば米の消費にはちょうどいいし、最近はご無沙汰だったからそろそろかなっていう感じではあった。
 何より、うちはご飯をあまり食べないからこれ以上の米を持っていてもしょうがない。せっかくの新米なんだから、新米のうちに食べた方がいいだろう。圭斗からの提案には、それじゃあそういうことでと素直に米を差し出す。

「でも、カレーパーティー1回で本当に1.2キロも消費出来るのか。1合って茶碗2杯分だろ? さすがに全員がそんなに食べるか?」
「まあ、単純計算だったことは否定しないけど、菜月さんのカレーと一緒なら明らかに1合以上食べる野郎たちがいるんだよ。こっちでは丼3杯は余裕とか言っている偏屈がいてね。少な目に計算してる方だと思うよ」
「ええー……だって、丼1杯って茶碗2杯分くらいだろ…?」
「3杯は余裕らしいですよ」
「そうか。うちが思うより消費は難しくなさそうだな」
「何ならカレパ開催費が安く済みそうでナイス3等」
「いや、でもうちは2等のSwitchが」


end.


++++

毎度お馴染みMMPの抽選会話です。お米をゲットできたということで、動き出すお話がいくつかありそうです。
菜月さんとしてはゲーム機が欲しかったようですが。大方の心配通り引き籠もりに拍車がかかるので外れて良かったですね。
そして圭斗さんの米算用ですが、少な目に計算していますね。菜月カレーを前にしたノサカのキャパを甘く見てはいけない。

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ