エコメモSS

□NO.3101-
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■移り行く城の風景

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 今週の僕はただひたすらに、延々とおでんを作るだけの生活になっている。今週末にはMMPでの大会があって、そして今日は前々から言っていた定例会でのおでん大会だ。当然、当日だけで準備が終わるはずもないので月曜から粛々と準備を進めてたんだよ。サークルまで休んでね。
 朝霞君から先に預かっていた大根は悪くなりそうだったから食べてしまったし、同じく預かっていた漬け物も、ちょっと味見をしたらあまりのおいしさに食べ尽くしてしまったのでまた新しい物をいただいて下拵えを始めたよね。今回の大根もまたいい物だったので料理しがいがありました。

「やあ。ようこそ僕の城へ」
「わー、すごいねー! おじゃましまーす!」

 大石君の車で定例会の3年男子3人が僕の部屋にやってきた。ヒビキは僕の部屋だと帰れないと言う理由で前々から不参加を宣言していたし、男子に関しては授業ももう少ないという理由で平日夜の開催でもあまり問題ないということだったので、今日の開催に漕ぎ着けさせてもらった。

「いいね、カセットコンロに土鍋。これぞおでんって感じで」
「ん、みんなはおでんをやらないのかい?」
「俺は家じゃこんな風にはあまりやらないかな。でも、おでんが食べたくなったら兄さんの店で食べるって感じ」
「自分の家の味だけど、外食のような雰囲気で食べるおでんか。それはそれでいいかもしれないね。僕には斬新なおでん像だよ」
「俺は基本自分一人だからコンビニで玉子を3つくらい買って」
「ん?」
「どうしたんだ圭斗。何かおかしかったか」
「あ、いや、似たようなことをしてる人がいたなあと思って」

 ちなみに、言わずもがなそれは玉子星人の菜月さんなのだけれども。尤も、菜月さんは玉子星人である以上にこんにゃくの女神でもあるのでしらたき優先で購入するようなのだけど。しらたき3つと玉子くださいというのが彼女のコンビニおでんの買い方だ。しらたきがなければ玉子2つ。

「カズは? 彼女さんと鍋をつつくこととか」
「まあ、あるっちゃあるけどどっちかって言うとMBCCでやる方が多いかもね。鍋は今から増えてくるのかな」
「こないだの交流会を見ててもお前はやっぱり手慣れてる感じがしたよ」
「ウチのそういう会って大体酒ありだし、俺がやんないとね」
「つか、それ自分が飲めなくね? いや、カズもあんま強くない方だけど、飲むの自体は好きなんだろ」
「そうだけど、飲み会の空気も好きだからお世話するのはそんなに苦じゃないかな。それで、大体みんなが落ち着いて来た頃に飲み始めるって感じ」
「健気だな」

 そう言って朝霞君はさっそく持ち込んだビールのタブを開けて乾杯の準備をしている。朝霞君もお酒は強くない方だけど、伊東のように飲み会の空気を出来るだけ長く楽しむことを考えるのではなく、その時やりたいようにやるのが彼のスタイルのようだ。
 大石君がいる時点で土鍋1回分でこのおでん大会が終わるとも思っていない。一応寸胴にもまだまだおかわりはあるけれど、それは週末MMPでやる方の大会を見越したおかわりだったりもするので、ここでどれだけ減るかがまた明日からの準備に関わって来る。

「それじゃあ、忘年会のようにもなってしまったけど乾杯しましょうか。お疲れっした! 乾杯!」
「かんぱーい!」

 朝霞君はビールを、そして大石君はジーマを瓶でそのまま。僕と伊東はそれぞれお茶で乾杯。僕もお酒はそのうち飲むけど、最初の一杯はとりあえずお茶で。この場の支度のこともあるからね。もちろん、台所には熱燗の準備もしてあるよ。

「ん! 圭斗うまっ!」
「うん、おいしい」
「そうかい、良かったよ。朝霞君も食べてくれよ」
「ああ。程よい熱さになったら食わせてもらうよ。さすがにあつあつおでんはいろいろとしんどい」
「あー、カオル猫舌だったっけ?」
「おでんは殺人兵器にも等しいからな。大根も玉子も美味いけど、熱くてなかなか食えねーんだよ」
「へー、大変だねー」

 ――と、朝霞君が最初の器が食べられる温度になるのを待っている間にも、大石君がどんどんおでんを食べ進めているのでやはり作り置きの寸胴からおかわりを用意することにはなるのだろう。この調子だと明日はまた一から準備しなければならないかもしれない。

「ふーっ、ふーっ……あちっ! あークソ、まだあっちいな」
「カオル、次に食べるのもうよそっといて冷ましといたら?」
「それだ、ナイスカズ。圭斗、まだ器ってあるか?」
「あるよ。持って来ようか」
「頼みます。あっ圭斗ー! ビールおかわりー!」
「はいはい。ちょっと待ってくれないかい」
「圭斗ー、ご飯あるー? 俺ばっかりおでん食べてる気がしたから別の物を食べたいんだけど」
「あるけど、一度に言われてもこなせないよ」
「あっ、ちーちゃん俺が行って来るよ。圭斗、しゃもじとお茶碗ある?」
「どこかその辺に用意してないかな?」
「はいはーい」

 メンバーが変わっても僕のやることは基本的に変わらないのだけど、鍋の周りの光景は会場が同じでもメンバーが違えば結構変わって来るのが面白いと思う。玉子星人と大飯食らいならMMPにも似たような属性のキャラクターがいるんだけど、何かやっぱりちょっと違うんだね。

「ふう。僕もそろそろ一杯やろうかな」
「おっ、いいねえ圭斗」
「ただ、僕は熱燗をやろうと思ってるからいざやるとなるとまた食事からは一歩遠ざかるっていうね」
「あっ、そしたら俺がやろうか?」
「大石君。出来るのかい?」
「お店でやることもあるからね。俺はもう結構食べてるし。圭斗も食べてよ」
「それじゃあ、お願いしようかな」
「あっ、麻雀あるんじゃん。圭斗お前麻雀やんの?」
「少し嗜む程度だけどね。朝霞君もやるのかい?」
「まあ、俺も嗜む程度だけど」
「へー。俺やったことないや。面白いの?」
「うん、面白いよ。やってみるかい?」
「えっ、麻雀やるのー? 俺もやるー!」
「大石、お前も出来んの?」
「ちょっとだけどねー」
「それじゃあ、おでんが一段落したらやろうか」

 朝霞君がいるから映画大会になるかなと思ってたけど、まさかの麻雀大会とは。何がどうなるかはやっぱりそのときにならないとわからないものだね。今はひとまずおでんを食べるフェーズだ。僕は何気にまだ全然食べてない。


end.


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前々から言っていた定例会おでんです。男4人がきゃっきゃしてるだけのヤツですが、もっとまったりさせたい
って言うかちーちゃんて麻雀出来るのか! 知らんかったけど、ちょっとだけなら出来るよーって言ってるのがただただかわいい
朝霞Pがやっぱりあつあつおでんが食べられないんですね。あちって反射してる。てか朝霞P久し振りやな! いつ振りや!?

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