エコメモSS

□NO.3101-
626ページ/742ページ

■winter solstice XX

++++

「結局、夏至カレーに対抗する「冬至○○」って見つかったんですか?」
「あー……そーいやそんなことも言ってたな」

 それは夏のことだった。奈々が持ち込んだ夏至カレーなる陽の行事の話題が肌に合わなかった陰の集団MMPでは、それに対抗すべく新たな冬至○○を考えようと話していたのだ。結局、それらしい○○が思い浮かぶこともなく、その話すら忘れたまま半年が過ぎたワケだが。
 時候で言えばそろそろ今がちょうどその時で、そんなことを言っていたなあと思い出したのは先にカレーの話題を持ち出した奈々だった。尤も、MMPでは季節関係なくカレーパーティーだ何だと食べているのでと夏至カレーも特にそれらしいことはしなかったのだけども。

「冬至の頃って最高だよな。何てったってアレだ、ほら、日照時間が少ないし、前提として冬だから暑くないし、日焼けはしにくいし」
「日焼けはともかく、日照時間が短いと洗濯物が乾きにくいし、冬は寒いし。それほど最高でもないと思うけど」
「洗濯物は冬のゴールデンタイムにパッと干してサッと取り込んでしまえばいいだけのことだし、寒さどうこうに関して言えばお前がだらしなさすぎるだけだろう。筋肉でも脂肪でももうちょっとつければいいんだ」
「うっ。しかし菜月さん、授業が山のように残っている君が、洗濯物のゴールデンタイム? つまり太陽が出ている間に洗濯物の世話を出来るのかな?」
「それはもちろん」
「授業をサボって、とは仰いませんよね?」
「甘いなノサカ。3年になってからはサボりの割合が減ってるのをお前も知らないワケじゃないだろう」
「それは存じておりますが、それでもそれこそ夏至の頃は眩しいとか日焼けするとか暑いという理由で引き籠もっていらしたのも存じ上げておりますので」

 それは履修発生時期を巡る社会学部のコースごとのうんたらという話も何回か聞いたので、菜月先輩の履修に関して言えばある程度納得はしている。だけど、それでも興味がない授業だからと言ってもサボるのはなかなかに。何だ、現社コースや市民福祉コースよりはメディアコースは3年以降の授業が多いとかだったかな。

「とりあえず、年末特番の方も一応進捗に余裕はありヤすから、久し振りにザ・MMPというぐだぐだで冬至○○について考えてもいいかもしれヤせんね」
「そもそも冬至とは。日が短いという以外に何かあるかな」
「夏至は踊って祝う国があるとかないとかという話もありますが、冬至は……調べよう」
「ノサカわからんことあったらすぐネットに頼るからアカンと思うわ」
「何とでも言え」

 少し調べた結果、冬至は最も日が短い日であることから、太陽が生まれ変わり新たに運が向いて来る日だとか、陰が弱まり陽に向いて来るという風に書かれていた。このことを「一陽来復」と言うらしい。フン、ヒロめ。ネットの情報も参考程度にするなら悪くないんだぞ。

「食べ物としては「ん」の付く食べ物がいいようですね。いろはにほへとの終わりが「ん」であることから一陽来復の願いがあるとかないとか」
「んのつく食べものか」
「それから、んが2つ付く物だとなおいいようですね。なんきん……つまりカボチャなどがこれに当てはまるのですが」
「はっ…! つまり普段から女性をカボチャ扱いしている野坂さんがそれこそ夜の帝王としてカボチャを食べまくるという日でしたか…!?」
「こーたお前ぶっ飛ばすぞ」
「神崎、野坂にそれをやられてしまうと僕のキャラクターが埋没してしまうのでそんな強烈なヤツを与えないでくれるかな?」
「それはそれは。失礼しました。さっ、野坂さん続けてください」
「あとはあれだ、にんじん、れんこん、うどんに寒天なんてのも。それから、冬至にこんにゃくを食べる地方もあるそうです」
「食べ物で言えばうちの天下じゃないか。そういや最近はデカ盛りスイーツシリーズもやってなかったな」

 菜月先輩のこの発言にギョッとされたのが圭斗先輩だ。何せ圭斗先輩は菜月先輩との付き合いも3年目になられるので、過去に菜月先輩が作って来られたトンデモビックリ料理の数々をリアルタイムでご覧になられ、さらには食されて来られた。話に聞いただけの俺たち2年生以下とは発言を捉える深刻さが違う。

「菜月さん、またああいう強烈な物を作るのかい?」
「いや、今回はただのコーヒー寒天のつもりだった。ただミルクとココアをかけて食べる。ハタチ過ぎたらさすがのうちも丸くなった」
「そう。それなら良かったけど。まあ、菜月さんは食べ物で遊ぶけど必ず食べ切るからね。その点だけが安心なんだけども」
「そうだぞ。どんなに失敗してもちゃんと食べ切るんだぞ」
「それで、菜月先輩のコーヒー寒天以外にMMPの冬至○○は思い付きヤしたかネ」
「いや、うちは割とガチなヤツを思いついてるけど、誰からも出ないなら言うぞ」
「どーぞ」
「カレーうどん、またはカレー南蛮が最強の冬至○○だと思うんだ」

 菜月先輩の理論によれば、カレーのスパイスで体をあっためて風邪をひきにくく出来るし、うどん……饂飩に南蛮と、「○ん○ん」も2つクリア。何より普通に美味しいし。栄養バランス的にビタミンは少し足りないけど、それはおかずにカボチャでいいんじゃないか。とのこと。
 確かにそれは一見理に適っているようには思う。カレーのスパイスの効果で体温を上げることが出来れば、免疫機能だってそれなりに回復するんじゃないかと。体温が1度下がると免疫機能は3割から4割は落ちると言うからな!

「やァー、結局カレーに落ち着きヤしたね」
「ところで諸君、今週末は今期MMP最後のカレーパーティーになるワケだけれども。厳密には例の米を消費する会が行われますので奮ってご参加下さい」
「よっしゃ、食うぞ!」
「圭斗先輩、カレーうどんは出ますか?」
「問題は菜月カレーがカレーうどんに適するかどうかだけど……まあ、今回は米の消費がメインの大会なのでうどんはなしかな」

 結局、夏至だろうが冬至だろうが年中カレー食ってるMMPでした。でも、菜月先輩のカレーがこれからはそう頻繁に食べられなくなるのは非常に寂しすぎるワケだが。はっ…! もしやこれが季節の移り変わり…!? 今週をずっとローテーションしてたいぜ! 日よ弱まれ、陰の力を!


end.


++++

神崎のカボチャの表現www そしてキャラかぶりの方を気にした圭斗さんであった。そういうのは気にするのね
冬至○○もMMPではカレー関係に落ち着いてしまったようなので、MMPはナノスパ界のカレー集団のようですね
菜月さんのデカ盛りスイーツの話は遠い昔にやったっきりかな……またやりたいけどこれは来年度以降かしら

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ