03

□ドライブアウェイ
3ページ/7ページ

「でも、実際途中からすごくサークルに顔出したくてうずうずしてたけど」
「それなら来てくれればよかったのに」
「咲良と日付合わせて何度も行こうとは思ってたんだけどな。ま、アイツはたまに抜け駆けしてたみたいだけど」
「ああ、咲良さんはたまに来てくれてましたね」
「ちゃんとやってるかどうかの抜き打ち検査みたいな物だって言ってただろ」
「違うんですか?」
「咲良自身、MBCCが好きでしょうがねーんだよ。女帝だなんだ言われても、所詮人の子だ」

 引退する前は、頼もしいけどちょっとおっかないって感じだった元機材部長の咲良さん。でも4年になってから俺たちの様子を見に来てくれるときはちょっと丸くなったなー、とは高ピーとも話してた。相変わらずの厳しさもあるけど、その中には咲良さんの思いみたいなものが滲んでるな、っていう風に俺は思ってたんだけど。

「まあ、咲良さんには俺じゃ手の届かないところを指導していただいたりしましたし、抜き打ち検査で間違いはなかったとは思います。でも、咲良さんが来たときはやっぱり俺ってまだまだだな〜って後でヘコむんですけどね」
「いや、アイツお前のこと褒めてたぞ。「ミキサー陣への教育が行き届いててダメ出しするところを探すのに苦労した」って」
「まあ、俺が咲良さん直々に扱かれて……いや、育てられてますしね」

 2年の時のファンフェスでの90分生放送だとか、夏合宿でのムチャ振りだとか、イベントをドタキャンした他校のミキサーに代わって急遽代役にさせられたりとか、本当にいろいろ。実戦の中で育てられたって感じで。それはミキサーのことだけに留まらず、IF全体をまとめる、ということに対しても。

「でも、3年になってからはお前も育ててたんだろ? 自分の跡を継がせるミキサー」
「跡を継がせる、って程ではないですけど」
「咲良が言ってたぞ。「高木からは伊東のニオイがぷんぷんする」ってな」
「ああ、俺口下手だから「見て盗め、触って試せ」って言ってましたし、多分それを忠実に守ったんだと思います」
「なるほどな」
「タカシは……今はまだちょーっとたまに不安ですけど、将来的には俺なんて軽く越えてくれるはずです。努力家だし好奇心も旺盛だし。って言うか、越えてくれないと困るんすけどね逆に」

 タカシの育成はまだ終わってない。むしろ始まったばかりだったのに。これからどうなるのかを見届けることが出来ないのは残念だけど、次に会ったときの成長っぷりを見るのもまた楽しみだったりする。ひょっとして、先輩たちもこんな気分だったのだろうか。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ