03

□Everything is your guitar.
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「高木〜」
「どしたのエイジ」
「明後日泊めてくんねー?」
「あ、うんいいよ」

 初めて部屋に行ってから、サークルの中でも高木とは割と仲がいい方になり、最初の方に抱いていた嫌悪感みたいなモノもすっかりなくなった頃。家の野暮用で誰かに泊めてもらわないといけないことになった。1週間前ではないけれど、一応2日前だ。当日いきなりじゃない分まだ常識の範囲内だろうということで迷わず高木に依頼。

「おじゃましまーす、」
「ゴメン、今回ちょっと汚い。いつもは1週間でゆっくり掃除してたんだけどさ、今回2日前だからまだちょっと手の届かないところがあって」
「いや、これくらいだったらまだ全然大丈夫だべ」

 確かに、初めて部屋に行ったときなんかよりは汚いものの、あれは本当に気合を入れて掃除したのがわかった分、今回は自然に生活してる上ではまだかなりキレイな方の部屋だ。むしろ、2日前に言われてこのキレイさ。きっと普段から割とキレイにしてるんだろうなー、と当時は思ってたんだ。

「エイジ、ご飯どうする? ちなみに今うち米しか食料ないけど」
「あー、適当に食いに行くかコンビニで買うかすればいいべ、近いし」
「そうだね、じゃあそうしよっか」

 うん、あくまでも当時は「たまたま」食料が少ないんだと思ってたし、アイツの部屋の冷蔵庫を勝手に開けるなんてこともまだしてなかったからその食料事情の実情も知らなかった。コンビニで買った飯で腹を膨らませたら、一緒に買った酒を飲む。

「じゃ、」
「「かんぱーい」」

「つーかお前それ」
「ブラックニッカだよ」
「そりゃ見ればわかるっていう…そんなの普通に飲んでんのか!?」
「最初の頃はコーラ割だったんだけど、最近コーラ割がちょっと甘ったるく感じてきてさ。水割りに変えたんだ」
「いやいやいや、そーゆー問題じゃねぇべ……もっと他にさ、チューハイとか果実酒とか焼酎とかあるだろ、ビールとか」
「あ、俺ビール飲めないんだよね、それに果実酒や焼酎は飲んだことないし。チューハイはたまに飲む程度かな。新しいのが出たら試すけど」
「お前そーゆーのをすっ飛ばしていきなりウイスキーに行くとか只者じゃねぇな」

 多分この辺で気付くべきだったのかもしれない。このニコニコした表情の裏にある、どこか規格外なスケールに。
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