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□ハローカミングニュースター
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「あーだりィ、ヒマだな」
「ホントだね、誰も来ないって」
「今日早めに閉めるか、1年生からの連絡もねぇし」
「ええっ!?」

 いけない、こうなったら高ピーの行動力は容赦ないんだ。せめてもう少しだけでも待ってもらおうと俺は何とか考えうる可能性を挙げるだけ挙げていく。

「ダメだよ高ピー、ひょっとしたらアポなしで誰か来るかもしれないじゃん」
「あ? 来るかよ、あんな大々的に「連絡待ってる」って書いてんのに」
「いや…ほら、シャイな人とかがさ」
「シャイなヤツがアポなしで来るかっつーの」
「ほらっ、高ピーファンフェスの番組、トーク練るとかさっ!」
「こないだ打ち合わせしてきたばっかだ」
「あ、そしたら〜…」
「つーか俺を引き止めたいのはわかったから、変にいろんなプラン出さなくてもいい。ここにいても帰ってもヒマならここにいる」

 どうやら高ピーをここに引き止めることに成功したようで、俺は胸を撫で下ろす。でも、このまま今日は誰も来なかったらどうしよう。まあ、俺も今の時間帯は出来れば外には出たくないんだ、だから帰りたくないってのもある。

 しかし、ここまですることがないと逆に笑えて来るんだ。遊ぶ道具でもあればよかったのにな、と呟く高ピーはかなりだるそうにしていて、いや、高ピーがだるそうなのは割といつもだけど、今日は特にだるそうで。ついにはちょっと外出てくるわ、と出て行ってしまった。きっとニコチンを補給しているのだろう。

 MDデッキの上にちょこんと乗った電波時計が示す時間は午後5時になろうとしているところ。4限はとっくに終わっている。そろそろ現役でも何でも誰かが来てもいい頃なのにな。
 本格的にすることがなくなった俺は、誰かがおいていったこれまでのサークルの写真がたくさん入ったアルバムを眺めていた。必要とあらばこれを使って新入生にMBCCの説明をすればいい、そう高ピーが言っていたのを思い出しながら。

 しかし高ピーはちょっと遅いなぁ。いつもはニコチン補給だって言って外に出て行っても5分くらいで帰ってくるのに。もう10分は経とうとしている。あ、もうすぐこのMD終わるや。そう言えば新しいストックにネーム入れ忘れてた。その作業でもやろっかな。
 機材部長としては、一応まだこの部屋でやるべき仕事は残っていたりする。だから別に1人でもいいんだけど、もしもがあったときのために人数は少しでも多い方がいい。特に、アナとミキは1人ずついて欲しい。もしもって? 1年生が来たときのことだよ。
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