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□ハローカミングニュースター
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「うーす、ただいま」

 うっすらとタバコのニオイに混じってる甘いチョコとバニラの香り。帰ってきたらしい高ピーを見ると、その両手には羨ましくなる物が。

「遅かったね高ピー…って、ナニ抜け駆けしてチョコサンデー買ってきてんのさ!」
「わりィ、急に甘いモン食いたくなって。安心しろ、ちゃんとお前にもキャラメルサンデー買って来てるから」
「マジで?」
「つーかお前甘いモン食いたくなってもこの季節外出れねぇだろ」
「サンキュ! マジ高ピー愛してる」
「そーゆーセリフはネタで済まされる宮ちゃんの前だけにしてくれ」

 と言う高ピーの目は心底マジなのがわかる。つーか俺はそっちの気はないっつーの。とりあえず高ピーの厚意に甘えてキャラメルサンデーをいただくことに。ネーム入れの作業は後回し。

「俺がいない間何か変わったことあったか?」
「全然」
「だろうな」

 さも当然であるかのように言う高ピーは少し得意気で、誰も来るもんか、と言いたげ。と言うか、少しの希望くらい持てばいいのに。せめて現役の誰かが来るんじゃないかとかさ。


「おはよーございまーす!」

「あ、果林おはよー、ゼミだった?」
「そうなんですよー、もう、ヒゲのメディア論演説が長くって! ま、適当に抜けてきたんですけど」

 どうやらゼミの新歓イベントの後でヒゲ教授に捕まっていたらしく、その表情からは疲れが滲み出ている。まあ、果林はヒゲ教授嫌いだしなぁ(それなのにゼミに入る辺りすごいと思うんだけど)。

「あれっ、今日いっちー先輩と高ピー先輩だけですか?」
「そうなんだよ。誰も何も音沙汰ないし、1年生からの連絡もなし。本格的に俺たちもヒマでどうしようかって言ってたところなんだ」
「ああ、そうなんですか」
「つーか果林、お前ヒゲゼミの学部新歓イベントで誰かMBCCに興味ありそうなヤツいなかったのか?」
「ああ〜、まあ、放送に興味ありそうな子が集まるのは当たり前っちゃ当たり前ですけど、どうでしょうね?」

 社会学部はそれこそいろんな活動をしているからか、学部オリエンテーションで学内をぐるりと回る形式を取っている(経済学部は教室に押し込められてのオリエンテーションだった)。その中で果林のゼミでは学内で一番人が行き交う場所にヒゲ教授が作らせたらしい簡易スタジオ体験なんかを行っていたらしい。あのゼミ、見栄えはするからなぁ。

「お前、適当に引っ張って来いよ」
「そんな余裕なかったんですってば、ヒゲアタシばっか扱き使うんですもん!」
「ったく、使えねぇな」
「ちょっ、誰がですか!」
「ヒゲっつーコトにしとけ」
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