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□ウワサのあのコのシルエット
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「果林」
「ハイナンデスカ高ピー先輩」
「つーかその棒読みやめろ」
「スイマセン冗談です」
「まあいいや。しかし今回の班編成、ちょっと「大人の事情」ってヤツが滲み過ぎてるぞ」

 夜の喫茶店。IF関係の会議をする喫茶店と同じチェーンのその店でにいるのはバイトの学生と俺らだけ。テーブルに班編成表のコピーとカフェモカを。サークル室では話せない話をするにはここが一番都合がいい。普段は店員の果林も今日は客だ。

「やっぱり高ピー先輩にはわかりますか」
「俺を誰だと思ってんだ。仮にも対策の前委員長だ、ナメんな」
「でも、こうするしかなかったんです」
「それがお前と野坂の出した最良の結論か」
「はい」
「ま、間違っちゃいないだろうけどな。それに、菜月の制御役に律を入れたのも悪くない判断だ」

 ったく、合宿の班編成がモメるのは毎年のこととは言え、今回の果林の班に関しては酷すぎる。まあ、どの班にも均等に問題児を振り分ける作業の大変さは経験しただけにわかるから言えるんだけど。

「しかし認めたくねぇが、菜月はホントに初心者講習会で株上げたんだな」
「すごいですよ、なっち先輩本当にIFのカリスマ状態ですもん。「組んでみたい」とか「同じ班になりたい」ってラブコールが凄かったんですよ」
「で、野坂が逆上したか?」
「強ち間違ってもないですね。ミーハーファンを片っ端から外す作業から入りました」
「おっと、それこそ冗談で言ったのに」

 ま、晴れやかな舞台は菜月に任せて俺は高みの見物っていうのが毎回のパターンとは言え、だ。耳に届いた今回の菜月フィーバーはどうなってんだ?と、さすがに疑問符を打たずにはいられず。

「そうなると条件は「ミーハーじゃない」かつ、「菜月を相手に出来る最低限の技術」を持ってる「1年」の「ミキサー」か。」
「そういうことです。見栄え的にも出来れば「男の子」の方が」
「それでいて、その1年のミキサーが緑ヶ丘の管轄下なら、何かあったときのケアなりフォローなりも楽だしな」
「今「緑ヶ丘」って書いて「お前」って読んだですよね先輩」
「どーせ「アタシタカちゃんと仲いいからその辺は大丈夫だよ」ってトコだろ」
「ありゃ、バレバレですね」
「で、ワガママ王女対策に向島2年ミキを副班長にしとけばいいっつーこった」
「そこにりっちゃんを推したのは野坂です」
「だろうな。王女サマも何故か律にはワガママっぷりが発揮出来ねぇっぽいし」

 目を落とした班編成の紙。じりじりと脳裏に焼きつくその名前。
 俺は合宿に参加しないけど、せめて番組だけは聞きに行こう。それで、最近はめっきり厳しいダメ出しをするヤツがいなくなった温いIFに一石投じてやる。
 特に、お前に対しては誰よりも厳しく見てやるよ。愛でられる、崇められるだけじゃつまんねぇ、お前ならそう思うはずだ。なあ、そうだろ菜月。
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