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□ハイリスク・ファクター
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「――で、伊東からの電話で断片的には聞いたけど、俺を呼んだ経緯を聞かせてもらいたいんだけど」
「ああ、そうだね。申し訳ない」
「それと、さっきの電話で「定例会の真っ最中」って言ってたのに、3人だけっていう状況になっているのは?」
「3人だけになっているのは他でもない、残りのメンバーがいるといろいろと面倒だからね」
「ま、わからないでもないけど」

 どこのIF系組織でも議長の考えることは同じなのかな、と笑いたくなった。あるいは、向島大学という大学特有の考え方なのかもしれない。
 奥村さんも対策時代には全員で集まるだけじゃなくて、高崎と俺だけ呼び出して個別に話をしていた記憶が蘇る。

「石川君を呼んだのは他でもない、インターフェイスの機材についての話だよ」
「で?」
「如何せんうちの学年はアナに人数が集中しすぎてミキサー不足だ。そこで、対策の機材管理係だった石川君の力を借りられないかと」

 確かに、年によってアナウンサーとミキサーの人数に偏りがあるとは聞くけど。
 そう言えば、去年もミキサー不足でところどころ伊東の力を借りていたことを考えれば、こういった話が出るのも仕方のないことなのかな、と思わないでもない。
 だけど、話の本筋をまだ聞いていない。ここで迂闊にどこかのお人よしみたいに「いいよ、言ってみて」とか軽々しく言ってしまうと後々面倒なことになる。
 定例会に力を貸すかどうかに返事をするのは、あくまでも話を聞いてからだ。焦ったらいけない。

「ねー石川クン、」
「ん?」
「それー、ドーナツ?」
「ああ、そうだけど」
「何かめっちゃいっぱい入ってるっぽいけどー、それ1人で食べるのー? ってかそんだけ買った!?」

 これにはさすがの松岡君も呆れた様相。どうやら加賀さんがこうやって話の腰を折るのは日常茶飯事のようだ。

「違うよビッキー、トオルはそこでバイトしてっからそんだけもらってこれるんだって。なあトオル!」
「あ、まあ」
「えー、いいなー! クリーミーエンゼルは毎日3個でも食べれる!」

 えーと、こういうときはどうすればいいんだろう。一応このドーナツはこの後の麻雀大会のための夜食なんだけど……

「よかったら、あるけど食べる?」
「えっ、マジで!?」
「えー! 俺も食いたい! めっちゃ腹減ってんだってー!」
「お前ら、会議中に食い物に群がるなって何度言えばわかるんだ!」
「……松岡君、何かゴメン」
「いや…いつものことだから」
「よかったら、松岡君もひとつどう? ……あ、でも立場がなくなるか」
「……お言葉に甘えて、ひとついただこうかな」

 まあ、3個減ったくらいだったらまだ夜食には事足りるだろう。本題はどこに行った?ということはひとまず気にしないでおこう。
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