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□とある金曜日のウタ
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 降り立った街には、人が行き交う。通勤通学ラッシュが一段落したからか、多少まばらではあったけれど。
 本来の目的であった写真屋では、「本日機械メンテナンスのため、仕上がりは午後1時以降となりますがよろしかったでしょうか」と言われ、実際写真はまだ受け取れていない。これも全く予定外のアクシデントだ。ただ、トラブル&アクシデントの中に身を置くのもさほど悪いことではない。
 手の中に増えていくのはポケットティッシュ。ビラ配りはスルー出来るようになったけど、ティッシュをスルー出来ないのは貧乏性なのだろうか。きっと何かの役に立つはず、といった思いが少なからずあるのだろう。持っていて損はない、といった気持ちが。

 駅前のショッピングビルの中を適当に見て回る。古着だったり、100均だったり。何を買うでもなくぶらぶらと見て回る。

「あっ、ジャスミン茶」

 輸入雑貨店を覗いたとき、そう言えばうちに常備しているジャスミン茶のティーバッグが残り少なくなっていたことを思い出した。これは今のうちに買っておかなければいけないと思い、ジャスミン茶の箱を手に取る。そうなってしまうと他にも面白い物はないかな、とぐるぐる巡る。
 季節が季節だからか、そろそろクリスマスが近いのだということをまざまざと思い知らされる。まあ、クリスマスだからと言って何をするでもなく去年と同じように独り寂しく過ごすのだろうということは目に見えているけれど。同じ外国産イベントのハロウィンだって「お菓子をくれなきゃ捻り潰すぞ」とは言っていたけど特に何もなかった。
 結局この店ではジャスミン茶のティーバッグとハーシーのキスチョコと、ブルースプリングという銘柄の水を買った。こないだヒロが海外土産として買ってきたお菓子なんかも普通に売っていたけど、そこは一応ヒロの手前スルーしておいた。

 エスカレーターで階を下りながら何を買うでもなくいろんな店を見て回って。いや、結局家の鍵につける用のキーボルダーを買ったから、何も買わなかったわけではない。でも、それ以外には特に買い物はしていないからほとんど物は買っていない。そもそも、そんなに買い物をするほどのお金も持ち合わせてはいない。
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