エコメモSS

□NO.2201〜3100
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■What training is it?

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「ふっ、ふっ、ふぅうううーっ」
「な、菜月先輩……一体何を…?」
「ふっ、ふっ、ふぅうううーっ」

 サークル室に入って目に飛び込んで来たのは、お腹に手を当てて謎の呼吸法をしている菜月先輩。強く短く息を2回吐き、強く長く吐けるだけ息を吐くのを繰り返している。はっきり言えば異質だ。

「あの、菜月先輩!」
「ああ、ノサカか。いや、その……去年のスカートが、ちょっと。ふぅうううーっ」
「ええと、繊細な問題でしょうから明言することは避けますが、ゴミ捨ての帰りにコンビニで肉まんを買ったりお菓子でその日の食事を済ませてしまうのが問題なのではないでしょうか。それでなくても1人暮らしではなかなか浴槽に浸かることもなく体も温まりませんし代謝も落ちそうです」
「ふっ、ふっ、ふぅうううーっ」
「野坂、お前ほどはっきり言える男は他にいないよ」
「圭斗先輩」
「ご覧の通り菜月さんは手軽に出来るお腹周りのトレーニングとしてこの呼吸法を選んでいるようだけど、放送サークル的には悪くないと思わないか」
「――と、言いますと」
「発声と腹式呼吸は切っても切れないものだろう?」
「なるほど。動機はともかくやっていることは放送サークル的に言えば何ら間違ってはいないのですね」

 相変わらず菜月先輩は例の呼吸を繰り返していた。菜月先輩と呼吸と言えば、ついうっかり過呼吸のことが結び付けられて少し不安になるのだけど、今やっているのは吸うのではなく吐くことがメイン。吐く分には問題ないだろうと思いたい。
 せっかくだし、みんなでやろうと今いる全員で菜月先輩の真似をしてみることに。あっ、実際やってみると結構腹に力が入るぞ。回数が増えて来ると案外キツいかもしれない。なるほど、これで去年のスカートを。

「ところで、2年生で一番腹式呼吸が出来てるのは誰になるんだろうな」
「と、言いますと」
「いや、うちとか圭斗がやってたって来年はいないし。2年生にそれを教えられるくらいに出来る奴はいるかなと思っただけだ」
「役職的にはヒロであるべきでしょうが、現実問題こーたではないかと思います」
「カンザキがか。とてもそうは見えないけどなあ」
「ああ見えてこーたは吹奏楽部でホルンを吹いていたそうですし」
「あーそっか、吹奏楽の出か。そういやリズム感もお前たちの中じゃ一番だな。無駄にスキップが上手くてウザかった」
「リズム感の神崎、ラブ&ピースもとい語彙力と感覚のりっちゃん、野坂はなんだろうね」
「ええと……俺は……緻密さという体でお願いします」

 腹式呼吸からどうしてそんな話になった。いや、2年のミキサー3人はそれぞれタイプが違って面白いというのは他校の先輩方からも言われている。自分たちもそれを自負しているし、切磋琢磨していこうという話は常々しているけれどもだ。
 機材王国MMPにおいてアナウンサーのみだった3年生が異質だったのは事実として、ほっといても勝手に育つみたいな感じで扱われてる感はありましたよね。徹底管理の緑ヶ丘に対する放牧の向島みたいな感じで。
 それはさておき腹式呼吸だ。そもそもMMPというサークルでは、本来練習メニューの中に発声練習が含まれているはずが、いつの間にかフェードアウトということはよくある。今年度も多分梅雨時期からやってないと思う。
 寒いとか雨が降っているとかいう理由でやらなくなるのだ。サークル室の中で発声練習をするのは気が引けるけど、この呼吸で腹を動かすくらいなら全然出来るじゃないか。来年度のメニューに取り入れようか。と言うかアナウンス部長はどこへ行った。

「これを続けてたら、ウエスト細くなるかな」
「食事のバランスにも気を遣っていただくのが先決かと」

 そう言えば、無理矢理放送サークル的に話を持って行ったけど、事の本題は少々ウエストがキツくなってしまった菜月先輩のスカートだ。でも、個人的には去年のスカートがちょっとキツくなってる、って危機感を抱いてる菜月先輩が可愛らしくて死にそうなので世界が素晴らしい。

「おはよーございまーす。あれっ、みんなして何しとんですか?」
「ああ、おはようヒロ。ふっ、ふっ、ふぅうううーっ」
「ノサカ、これって子供産むときのヤツやなかった?」
「ちょっ、違う!」


end.


++++

たまに菜月さんがウエストを気にし始めると冬だなあという感じがします。肉まん食べてる話とかもやりたい。
確かによくよく考えれば結構繊細な問題だし圭斗さんにはどうもはっきり言うことが出来なかったようだけど、ここで伏兵ノサカが大活躍!
でも、何やかんや菜月さんが可愛くて世界が素晴らしいってなってるし安定っちゃ安定のノサカであった

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