エコメモSS

□NO.1001-1100
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■そいつが彼女のやり方

++++

「つばめ、服が面白いことになってるね」
「え?」

 対策委員の会議でみんなから指摘されたのは、服に貼り付けたガムテープ。ちなみに、布ガムテ。

「ああ、これ」
「それ、わざと?」
「わざとわざと。今ウチら丸の池ステージの前だから結構立て込んでてさ。手の甲にメモ書くのと同じ感覚ね」

 中身は「ビニテ買いに行く」とか「クーラーボックス忘れない」とかそんなようなこと。メモ帳も持つには持ってるんだけど、ウエストポーチの中からそれを取り出すよりは、紐に通して一緒に掛けてるそれをビリッと破く方が早いから。
 手の甲にメモを書いてた時期もあるにはあるんだけど、汗をかいたり手を洗ったりしているうちに消えちゃって残念なことになったから学習した。メモは目立つところに、消えないところに書くべしというところでたどり着いたのがガムテープだった。

「ステージはクーラーボックスなんて使うんだね」

 右腕に貼られたそれをまじまじと見つめて果林が不思議そうな顔をしている。ほぼラジオメインの緑ヶ丘からするとステージのあれこれはすべてが新しい発見なのかもしれない。

「ディレクターの雑用ね。ステージは屋外だからさ、普通にドリンクとか置いてても温くなるし、温くなったらなったでDは何やってんだってキレられるとか意味わかんないよね買い出しに行かせといて。そんなに冷たいのがいいならテメーで買いに行けよみたいな」
「――って言いながらクーラーボックスを準備しようとする辺りがディレクターの鑑だな」
「星大のDと星ヶ丘のDは性質が違うからね、単純に比較出来ない出来ない」

 そう星大のプロデューサーに笑って答えれば、Pの性質もまた違ってくるのだろうかと考え始める辺りがツカサは星大らしくクソ真面目だ。ツカサのPっぷりは見たことがないからわからないけど。そもそもラジオのPっていうのが想像出来ない部分だったりもする。

「その、腕に直に貼ってるのは? 何も書いてないみたいだけど」
「これは腕擦っちゃって血が出たトコの応急処置」
「ちょっ、つばめそれダメじゃない!?」
「しょーがないじゃん水だってなかったしバンソーコなんて持ってなかったんだから」

 きっと剥がすときにめちゃくちゃ痛いんだろうなと思うからこそ今でも剥がすに剥がせず。必要なのは、カサブタを剥がす時の度胸だ。

「それじゃあ、これは? 背中に貼ってるの」
「背中? ちょっと果林取ってそれ」

 自分では見えないところに貼った覚えはない。だってメモ書きなんだから、その存在を意識出来なきゃ意味はない。取ってもらったそれに書いてある文字を見れば、犯人が誰かは一目瞭然。

「これはシカトだわ」
「いいの?」
「これ絶対洋平だから」

 そしてそのテープをくしゃくしゃに丸めれば、タスク整理完了。ベーグルなんて絶対買って行ってやるものか。

「つばめ、もう1枚貼ってるよ」
「ええっ!? ちょっ果林取って」
「はい」
「えーと、「メモに使うならガムテを班の経費で落とすな」――って朝霞サンまで!」
「つばめ、先輩に愛されてるなあ」
「どこが!」

 いつの間に仕込まれた忠告かはわからないけど、朝霞サンまでそういうのを仕込んでくるとは思わなかったワケで。

「あーもう、朝霞サンのそのガムテはどこから出てるんだっての!」
「でも、Pの指示は基本絶対なんだよね、どこの学校でも」
「ツカサ、そんなときばっかPぶるな」


end.


++++

何だか最近対策メンバーの中心につばちゃんがぐいぐい来てる感。向島がまさかの空気! まあ仕方ないよね、議長来てなさそうだし。
ツカサは対策委員メンバーの中では苦労人ポジションになるのかなというのがうっすらと見えてきてる。つばちゃんとの相性はたぶん悪い。
ステージのDとラジオのDはそれこそ本当に性質が違うので一概に比べることも出来ず。いろんな活動があって、いろんな役割があるんだなあ。

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