エコメモSS

□NO.1001-1100
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■谷間の社会学・序

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「いっちー先輩っておっぱい星人ですよね、そんなおっぱい星人のいっちー先輩にちょっと聞きたいんですけど」
「ちょっ、果林どーしたの急に」

 おー、珍しく伊東が焦ってら。それに高木がちょっと不思議そうな顔してる。しかし果林はどうした、よっぽど速急に解決したい疑問でも湧いたか?

「夏になると露出度ってやっぱり上がってくるじゃないですか、服の布面積が小さくなると言うか」
「そうだね、夏だし」
「服の隙間から胸の谷間が見えたときってどう反応したらいいんですかいっちー先輩!」

 果林の疑問がまあ女らしくねぇと言うか。そんな質問を振られた伊東も返答に困っているようだ。ただ、返答に困っているのは果林や俺の他にもサークルメンバーがいるからだろう。気にするのは世間体か。

「あの、果林が見えなくしたいとかそーゆーんじゃなくて、見ちゃったときの反応?」
「だってアタシ谷間ないですし」
「いや、それを堂々と言われても返答に困るんだけどさ」
「つーかそんなモン、見慣れてマヒしてる伊東に聞いたところで解決策なんか出るワケねぇだろ」
「見慣れてるからこそ対処の仕方はわかるかと思ったんですけどね」

 果林が言うところによれば、夏になって服の露出度が上がった女に対する目のやりどころに困る、とのことだった。さすがに同性を性的な目で見ることはないが、そんな調子だと野郎の前ではどうしてんだと疑問に思ったらしい。
 そして行き着いたのが、不慮の露出被害に遭ってしまった野郎だったらしい。別に見たくて見たワケでもないのに性的な目で見てる、と言いがかりをつけられることも少なくないんだろうな、などと、もう少し踏み込めばまるで「ナントカの社会学」と銘打てそうな大演説。

「って言うか高ピー、彼女のそれとそうじゃない子のそれってまた違くない?」
「あー、確かに。興味ねぇヤツの谷間なんざグロ画像だもんな」
「そこまでは言わないけどさ」
「胸の谷間をグロ画像扱いとかさすが高ピー先輩不感症ですね」
「果林てめェその言い方は語弊が生じるだろ」
「ああ、女性の体に飽きてるんですよね」
「お前いい加減にしとけよ」
「いひゃいいひゃいいひゃいいひゃい!」

 果林の言葉に含まれる悪意は残らず拾い上げて。どこぞの腐女子がいなくて助かったぜ。

「ンもう、冗談じゃないですかあ」
「でも確かに高ピーがおっぱい星人だって話は聞いたことないよね」
「だから先に言っただろ、グロだって。今ならともかく右も左もわかってねぇ頃に押し潰されて見ろ、軽くトラウマだろ」
「それ何年前の話?」
「10年くらい前じゃね? だからあれだ、Bありゃ十分だ。よかったな果林、こういう需要もあるんだ」
「くっ……どーせアタシはそれすらもないですよ!」

 結局、本題の「胸の谷間が見えてしまった場合はどうするべきか」というところに関する結論は出なかった。ただ、見せつけてるヤツもいりゃ本当に事故のヤツもいる。見なかったフリをするのが1番だろう。女ならともかく男は下手にそういう部分に目をやらないのがいい。電車の中で両手を上げているのと似た感覚で。

「伊東、今度それについて圭斗にでも聞いて来い。MBCCの野郎よりかは模範解答も出るだろ」
「それだ」


end.


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えっ、高崎って大きなお胸にトラウマあったの?回もとい夏の視線回。いっちーは大変だ。
実際「えっ、こんなので講義やんのか」みたいな「○○の社会学」という講義もあったりする。谷間はさすがにないだろうけど。
か、果林はアスリート体型だから……ぺったんこでも問題ないですし……

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