エコメモSS

□NO.1001-1100
92ページ/110ページ

■Z軸の減算エネルギー

++++

「みやっち絶好調だねえ」
「自家発電じゃ足りない燃料を投下されたときの燃え上がり方はハンパないですよ」

 ディスプレイに浮かぶお絵かきチャットのキャンバスにさらさらりと出来上がっていく線画。これを描いているのはみやっち本人ではない。みやっちのオン友さんがその絵を描いている張本人。結構あっさりとした絵柄の人だなあ。
 その裏でみやっち本人はバチバチと文章を打っているし、インプットとアウトプットを同時にやるとかさすがの回路をしてるよねえ、さすがワーカホリック。ちょっと違うか。

「片桐さんのロリツインテにうちはどれだけ転がり回ったか」
「みやっちはあんまりやらない分野だよねえ、そもそもみやっちの創作って男多めだし」

 たまに自分の分野外のところの要素を補給するのもいいものなんですよ、とみやっちが得意げな顔を浮かべている。それはアタシとみやっちの玄関先の井戸端会議にも通じるところがあるし、わからないでもなかったりする。
 缶チューハイを飲みながら、アタシもさらさらりと白地の紙に線を走らせていく。先ほど話題に上ったロリツインテ。あまり描かないタイプだけになかなか思うようにはいかないけど。そもそもアタシの絵柄が小さい子を描くには向かない。

「――って、きたあああ! 片桐さんあなたって人は!」
「どしたみやっち!」
「見てよみなも! パーカーにヘッドホンとかガチすぎるでしょ! しかも黒髪短髪少年! これうちしばらくご飯抜きでも戦える」

 カチカチカチっとみやっちが光にも見紛うほどの早さでその画像を保存すれば、いかに黒髪短髪少年とパーカー、そしてヘッドホンの組み合わせが素晴らしいのかを語り始めるのだ。
 きっと画面の向こうにいる片桐さんもみやっちのその大演説を何度も目にしているだろう。こうやってたまに絵茶とかやると、一緒にやってる相手をあからさまに釣りたくなることがある。片桐さんもみやっちを釣りたくなったのかもしれない。
 しかも、みやっちのようなタイプの人に一度燃料を投下してしまえば、あとはもう溢れるように新たな萌えが生まれてくる。それこそ止めどなく。文章を打ちながらも右手ではシャーペンでメモを取っている。あなた手が何本あるんですかね。

「探せばいそうじゃない? 三次元にも」
「うん、いるよ。ってかカズがそうだもん」
「じゃあ彼氏サンの相手してあげればいいのにい」
「違うのみなも、他人様の絵柄で提供してもらうということが燃料になるんですよ。今この瞬間において三次元はお呼びでない」

 そしてみやっちが次に発したのが「ロリツインテ+ヘッドホンください」だったのだからもう。みやっち曰く、片桐さんの描くヘッドホンはかなりリアルなのがいい、とのことらしい。確かにあっさりとした線でシュッと描かれているのは機械には向いているかもしれない。
 するとみやっちのディスプレイの片隅で「ポコン」とポップアップが浮かんで、何かを告げる。そのお告げに従えば、もう一度響くみやっちの悲鳴。開かれたメッセージ本文には、「この線画は似るなり焼くなり好きにどうぞ」と。

「バイク少年きたあ! さすが片桐さん男の人だけあってメカ上手いー! うわあ片桐さんうちのこと殺しにきてる。うん、これうちも片桐さんにロリツインテあげるべきだよね」
「って言うかみやっち、三次元で手の届く物を敢えて二次元に求めてるよねえ」
「カズは直球すぎて直視出来ないだけ。あと萌えとか燃えって言うより生活の一部」

 そうきますか。

「こ、このリア充が!」
「えー!? 今日放置されてるのに!」


end.


++++

慧梨夏みなもの残念な回+片桐さん(石川)。きっと片桐さんは家族で選挙に行って外食して帰ってきた。
そうか、石川はあっさりというかすっきりした絵柄なのね。ヘッドホンからバイクまで描けちゃうのね。さすがだぜ!
はっ……もしかして、キーボードだのピアノだの弾く銀縁眼鏡の殿方くれええとか慧梨夏が叫ぶと…!? ひょっとするかもしんねえな

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ