エコメモSS

□NO.1001-1100
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■描く美曲線グラフ

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 バスケットコートに弾むボールの音が幾重にも重なり、振動と共に反響する。キュッキュッ、とバッシュの底が擦れる音もまたをかし。飛び散る汗も、夏の色かな。

「美弥子サン、フォロースルーどうですか? 指先とか、バランスとか」
「うーん、もう1本」

 パスをもらって描く放物線は、リングに嫌われ。必殺の飛び道具の調子はなかなか上がらない。それはたまらんと先輩に付き合ってもらって特練の真っ最中。何が悪くてスリーポイントが決まらないのか、原因究明から。

「どうですか?」
「あのね、フォロースルーどうこうって言うより二の腕が気になる。慧梨夏ちゃんジャンプしててちょっと重くなった感じしない?」
「美弥子サン何てことを!」
「アンジェアンジュの天の川ゼリー」
「ううっ……太りました……」

 いつもながら美弥子サンは厳しい。一番キツいところををズバッと突いてくるのはバスケのプレースタイルにも通じるところがあるかもしれない。さすがGREENs女子のエースフォワードだ。

「だって天の川ゼリー美味しいんですもん」
「確かにあれは美味しいね。最近暑いから重いケーキとかは辛いけど、ゼリーだからつるっとイケちゃうし。でもそれとこれとは別だからね。慧梨夏ちゃん、今はTシャツだからともかくユニフォームになったら余計目立つよそれ。それとも胸も揺らして二の腕から視線そらす?」
「胸はしょうがないじゃないですか! ホンット美弥子サンってカズと姉弟ですよね!」
「それは冗談だってば。でも、もう少し絞った方がいいと思うよ」
「そうなんですよねー」

 将来のお義姉さま(予定)に厳しいところを突かれてタジタジになるのは毎度のこと。油断するとすーぐ食べたモノがお肉になっちゃうこの体質が憎い。食べても太らない伊東姉弟には理解出来ないに決まってる。
 もうちょっと絞れと言いながら、美弥子サンは人の二の腕を触って遊んでるし。二の腕と胸の柔らかさって同じなんだっけ、とか言いながらニヤニヤしてるのがまた姉弟ですよ本当に。

「確かにむっちりボディが損なわれるのは残念だ。二の腕カーテンの感触も素晴らしい。弟の心情を代弁するとするならね」
「カズなら本当に言いそうなんですけど」
「それでもだよ、アタシはカズをオトした放物線を取り戻して欲しいワケよ。先輩にして姉(予定)からの愛の鞭だよ慧梨夏ちゃん」

 確かにベスト体重から比べると3キロも太ってしまっているのは問題だ。天の川ゼリーもしばらくは我慢しないと。でも、ご飯は食べたい。食べなきゃ動けないし。

「慧梨夏ちゃんには専属のトレーナーがいるでしょ。食事のカロリーコントロールしてもらえば?」
「結局カズ頼みじゃないですか」
「逆に、食べるヒマもないくらいに趣味の方に没頭すれば。動力源は萌えのエネルギーで」
「それだ」

 言っても夏は戦争だから。趣味の同人にしても水着になれるかなれないかのボーダーにしても。趣味とサークルに没頭して魅惑の放物線を取り戻す頃には、ビキニだって着れるようになるかもしれない。

「得も言われぬ流線型、ね」


end.


++++

慧梨夏のスリーポイントの精度って、その日の調子とかメンタルとかよりもリアルに体に影響されてそう。爪の長さとかね。
義姉さま(予定)は結構ズバズバと物を言いますがまあ、それも強気で男勝りな伊東家の女なのでね。
しかしどうやら伊東姉弟、慧梨夏の二の腕で遊ぶのが好きなんだな! そういうところが姉弟だなあ(笑)

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