エコメモSS

□NO.1101-1200
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■買出しの合言葉はD

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「それじゃあ行きますかー」
「おー!」

 学生らしからぬ左ハンドルの外車に乗り込んで、いざ行かん買い出しの旅。夏合宿に必要な備品の買い出しとは言うけれど、実際ちょっとした小旅行の気分だ。運転手のゴティも、果林もつばめもテンションが高いからか。

「そういや対策のイベントで買い出しって、初めてくらいの勢いか」
「そだね、初心者講習会は特にそんな必要になるものもなかったし。普段のサークルでも領収書が必要な買い出しってあんまやんないからワクワクするー」
「だな」
「えっ、ラジオの学校ってそんな買い物しないの!?」
「えっ、ステージは?」
「ウチはもう買い出しに次ぐ買い出しですよ」

 ステージのディレクターがどんだけ買い出しに慣れてるかってのを見せてあげよう、とつばめが得意げな様子だ。ただ、次の瞬間にはどうして買い出しなどの雑用ががディレクターの仕事なのかという愚痴が繰り広げられたのだけど。
 対策委員だとトップだろうが何だろうが買い出しに付き合ってくれてありがたいよ、と悲壮感に溢れたつばめらしくない表情さえも浮かんでいるくらいだ。よほど普段から星ヶ丘ではディレクターというだけの理由で雑用をいろいろ押しつけられているのだろう。

「まあそういうことだから買い出しのノウハウは任しといてよ」
「頼りにしてますつばめ様!」
「あ、そう言えば野坂、名札入れる用のカードホルダーだけど、アタシの独断で事務用カタログから注文しといたから。もう届いてるし。あ、心配しなくても単価は100均行くより安く上がってるんでご安心を」
「マジか!」
「つばちゃんマジ有能じゃん。俺今日マジで100均巡りかと思って覚悟してたのに」

 つばめが先手を打っていたおかげで今日の買い物はさほど苦労しなさそうだとゴティがほっとしているようだった。そりゃそうだろう、いくら100均とは言えカードホルダーが40枚以上もあるかと言えば微妙なラインだろう。あらかじめ予約をしてあるとかなら話は別だけど。
 他にはあれがいる、これがいるなどと、先の会議で話していたことをもう一度おさらいして。あれはどういう店がいい、これはどういう店がいい、などということをすり合わせていく。移動の効率だとか、値段が重要な要素になってくる。

「そーいやつばちゃん、そのカードホルダーって今どこにあんの?」
「今は星ヶ丘の部室に置いてるけど、部の上の連中にバレたら面倒だから本当は早急に回収したい」
「じゃあまず星ヶ丘に寄ろうか」

 星ヶ丘大学近くならつばめ行きつけの100均や文具屋もあるし、敏腕D様の土地勘もある。必要な道具も粗方揃えられるだろうという判断からだった。

「でもさ野坂、これ買い出しすんのはいいけど買った物はどこに保管しとくワケ? あ、ウチの部室はアウトだから」
「インターフェイスの機材と一緒にするにもその機材がどうなってるのかもわかんないしなー……どうする」
「んー、よっぽど暑さとかで品質が変わらないような物はゴティが車の中で預かっといてくれる、とか」
「果林お前そういうのをさらっと言うよな! まあいいけどさ」
「いいんだ」
「ゴティ様々だな」
「ゴティも有能Dじゃん」
「いやいや、つばちゃんには敵いませんって」

 そして、車内会議で決まった通りの順番に青い車は進んでいく。みんなそれぞれ有能過ぎてもうこれマジで、議長の出る幕ねーな。いや、出る幕がないくらいがいいのかもしれないけど。

「そもそも俺ディレクターじゃないし」
「違う違う、ゴティはドライバーのDだから」
「あ、そっちね」


end.


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ゴティ先輩は目立たないけど実はその働きが大きいタイプ。だったりするんだけど如何せん目立たないからね!(キャラが立ってないだけとも言う)
ゴティ先輩の愛車は左ハンドルの青い車。プジョーね。助手席に乗った子はみんな「違和感ある」って言っちゃう。
おお、地味に現在決定してる対策委員のミキサーが揃ってるじゃないか。そういう部分の話も聞いてみたい。あっ、この話果林空気だ。

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