エコメモSS

□NO.1101-1200
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■ズタボロフリーランス

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 春山さんという人は本当によくわからない人で、人生行き辺りばったり、そんな風に見えて仕方ない。
 大学4年生になると就職活動をする人がほとんどだ。この人も春頃は就活をしていたように思うが今ではそんな様子が全く見られない。だが就職が決まっている風にも見えない。
 それなら、大学院に進学するのだろうかと思いきや、進学に向けて勉強をしている様子もそれと言ってない。知らないところでやっているのかもしれないが、この人のことだから何もしていないだろう。

「将来? 全然考えてないよな。あ、強いて言うなら旅して暮らしたい」
「あなたは本当にクズですね」
「じゃあ私のこと養えよ」
「どうしてそうなる」

 先輩相手だと言うのに思わずタメ口になってしまうほどには呆れて物も言えない。この人がどこを向いて生きているのか全くわからないのだ。いや、それを知ってどうなるというワケでもないのだが。
 私を嫁にすれば美味いポテトサラダを作るし芋に困ることはないと春山さんは豪語するのだが、オレは特別ジャガイモが好きというワケでもないし、ポテトサラダも自分の家の物が1番美味いと思っている。
 それに、今この状態で養えと言うからにはオレがこの先貯めるであろう私財を喰い潰す気なのではなかろうかと。たとえ宝くじで5億当たったとしてもお断りだ。

「そんなに誰かに養ってもらいたいなら、高齢の資産家にでも近付いたらどうです」
「あからさまに財産狙いだってバレて遺族にボコボコにされるのが目に見えてる」
「でしょうね」
「酒飲んでたまにフェス行ってたまに旅して35くらいでポックリ逝きたい」
「あなたは本当にクズですね」
「じゃあ私のこと養えよ」
「どうしてそうなる」

 すると春山さんは、願望を言うことの何が悪いのだと開き直るのだ。誰かに養ってもらいたいというそれも、酒飲んでたまに音楽フェスに行って以下略というそれにしても、あくまで願望であると。
 そもそも、春山さんがその気になれば就職などどうとでもなるだろう。星大生で、一応留学経験だってあるのだからそれこそ履歴書的には目を引くというのに。
 ただ、定職に就いて雁字搦めになる生き方よりかは、フリーランスな生き方の方がイメージとしてはしっくり来るのだけど。それを言うと調子に乗るだろうし面倒なことになるだろうから言うことはしない。

「いやでもホントマジ、35くらいで逝くからその後で本命の人と結婚してもいいしリン結婚してくれ」
「ヤなこった」
「わかった、30で手を打とう」
「何がですか」
「って言うか私と婚姻関係にあっても意中の相手がいればその人に子種蒔くのだって全然構わないしむしろ赤ちゃんで癒されたいから頼むリンどっかその辺の子孕ませてくれ、生まれるまで待つから。お前だって童貞じゃないんだ、孕ませ方くらいわかってるだろ」
「そろそろ訴えますよ」

 かく言うオレも将来のことはそこまで具体的に考えているというワケでもない。大学院に進学したいとは思っているが、その先をどうするかということはふんわりしている。それこそその先、就職や結婚などまっさらだ。
 ただ、何もかもがまっさらだとは言え、何をどう間違えてもこの人を嫁にもらうことはしないし、養わないということだけははっきりと決めた。この人は悪友レベルの先輩であるくらいがちょうどだ。強いてこの人に魅力があるとすれば――

「ただ、芋は下さい」
「リン、お前はそんな時ばっか都合がいいな」


end.


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春山さんって、多分クズ度がナノスパでも指折りだと思うんだ……いや、やるときゃやるよ! クズな面はたまに顔を出すだけ!
リン様に「嫁にしろ」だの「養え」だの、挙げ句「癒されたいからどっかその辺の子(ry」だの言いたい放題ですね!
リン春の飲みって、暴言(リン→春)と下ネタ(春→リン)の応酬になるんじゃないかと思い始めてきたよ……美奈には見せられないね!

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