エコメモSS

□NO.1101-1200
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■We're bad actors!!

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 『俺たちはいわゆる悪の組織というヤツだ。世間の目から逃れるようにアジトを構え、衣装は悪のテンプレ・黒尽くめ。世界を滅ぼすため、日々精力的に活動している。
 活動内容は、世界を守るために動く組織を阻止すること。奴らは世界を守るため、3つ集めると神のような何かが現れるというお宝を探している。集めさせては大変だとそれを先に奪うというのが目下の活動。
 ――なのだけど、それで生計が立てられるワケではない。こないだも公共料金の滞納で電気が止められた。だからヒーローショーのアルバイトでお金を稼いだりと、悪の組織とは言えなかなか苦労は絶えない』

「菜月さん、これは何だい?」
「ラジドラの原案。暇だったからちょっと書いてた」

 菜月さんが持ち込んできたそれをさらさらと読んでいくと、ちゃんとやるとなかなか壮大な話になりそうだなと思う。これをどうラジドラサイズにしていくのだろうか。
 普通は世界を救う側の話が多いのだけど、滅ぼす側の話というのも珍しい気がする。菜月さん曰く、この話では滅ぼす側ではなく守ろうとする方が悪人なんだとか。そのパートは許可が出れば書くらしい。

「こないだノサカと電話してたら盛り上がって。その作品とかにもよるけど、前線に出てる敵の3人組とかって雰囲気よかったりするし楽しそうだなって」
「なるほどね」
「世間様からすれば世界を滅ぼそうとするなんて、と見えるかもしれないけれど、実は守ろうとする理由が世界を混沌に陥れるためだったらどうするというのもポイントではある」
「じゃあ、お宝を3つ集めると現れる神様は邪神か何かなんだね」
「その辺は考えてないけど、力って使い様だって言うじゃないか。だから、使い方次第で善にも悪にもなるっていう感じなのかな」

 本当は世界を滅ぼすとかではなくて、電波塔の先端に自分たちの旗を掲げるとか、恋人たちの聖地にあるフェンスに大量にかけられた南京錠を片っ端から取り外すとか、そういう些細な悪いことをする組織の話にするくらいがよかったとのことだけど。
 そういうギャグめいた、法に触れない程度の悪いことを考えるのが楽しくて楽しくて、と菜月さんは眠そうな目を擦る。ひょっとすると、夜中じゅうこの原案を書きながら野坂と悪いことを話していたのかもしれない。

「菜月さん、ぜひこの話の続きが読みたいね」
「ラジドラにするしないは度外視でか?」
「度外視だね。そもそも、今から僕たちの代でラジドラをひとつ完成させるには時間がなさ過ぎるよ、学祭もあるし。人数がいなけりゃ演技力もない」

 それなら悪ふざけの出来る環境を用意してもらおうか、と菜月さんは真面目な顔をして言った。そんな物、そのうち勝手に出来るじゃないか。ムライズム、そしてラブ&ピースという名の悪ふざけの蔓延するこの部屋に人が集まれば、いくらでも。

「おはようございます」
「おはよう野坂」
「ノサカ、昨日電話で話してたあの話の草案が出来たぞ」
「ナ、ナンダッテー!? まさか本当に書き上げられるとはさすが菜月先輩…!」
「圭斗が続きを所望してるから、みんなが来るまで昨日の電話の続きを話そう」

 何が正義で何が悪なのかはわからないけれど、悪いという字が使われることすべてが本当に救いのないほど悪いことなのかと言えば、否。


end.


++++

菜月さんとノサカはたまにメールから発展した電話をすることがあるのだけど、多分今回もそんな感じだったんじゃないかと思ってみる。
そんな彼女たちの悪の組織めいた悪ふざけの会話を想像して生暖かく微笑んでるのが圭斗さんのスタンス。
圭斗さんの役どころは悪の組織の影の司令みたいな人なんだろうなあ。菜月さんはそういうところまで妄想を加速させた上で台本や原案を当て書きするのが得意だよ!

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