エコメモSS

□NO.1201-1300
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■夢の国の従者

公式学年+1年

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「そろそろね、ラジオの方も2年生にちょいちょい教えていこうと思ってるんだよね。岡山君、スケジュールに入れといてよ」
「はい」

 季節も何も感じられないスタジオの奥でも、話だけは秋が深まっていた。
 佐藤ゼミの課外活動として行っているゼミラジオは、ガラス張りのスタジオでの公開生放送だけあって見栄えするし派手っちゃ派手。
 そのゼミラジオは主に3年生の担当で、曜日ごとにテーマが決められている。学祭が終わると2年生から何人か選抜して代替わりの準備が始まるというのは去年アタシたちも体験した流れ。

「千葉君もMBCCを引退してお昼の時間出来たでしょ? ブースで2年生にいろいろ教えてあげてよ」
「センセ、代替わりはしましたけど厳密に言うと引退は年末なんで言うほど時間はないです」
「高木君はサークルでは何曜日に番組やってるの」
「金曜日でアタシと組んでますけど」
「ちょっと、何て空気が読めないスケジュールを組んでくれてるの!」

 当然のように2年生の選抜メンバーの中にタカちゃんの名前も候補に挙がっていたらしい。言っちゃえば選抜メンバーなんて、タカちゃんたちがよく言う「いつものメンバー」なんだろうけどさ。
 って言うかMBCCの昼放送が空気読めないスケジュールとか何言っちゃってくれてんの!? そりゃ金曜日のフリートーク枠でがっつりタカちゃんを使いたいのはヒゲの考えそうなコトだけどさ!

「佐竹君と安曇野君は木曜のサブカル枠確定で、鵠沼君も体育会系だから火曜日のスポーツ番組に入れたいと思ってるんだよね。高木君には金曜日でミキサーの道を突き詰めてもらおうと思ってたのに! 千葉君、君の力で何とかならないの!?」
「アタシに言われても。もう代替わりしたんでサークルでの実権はありませーん」

 ぷんすこぷんすこと自己中心的なことを言って怒ってるヒゲの相手をまともにしてたらいつまで経っても終わらないし、こういうときは適当に放置するのが1番。
 不可抗力だよねと桃華が、そして災難だったねと小田ちゃんが労ってくれるのには、本当だよと返すほかになく。アタシだってぷんすこぷんすこと怒りたい気分だってのにさ。

「でも先生、高木君て即戦力ですよね? 俺が細かいことを教えられる気がしないんですけど」
「小田君心配しなくていいよ。MBCCで使ってない機材の使い方だけさらっと教える程度で大丈夫だから。千葉君、小田君にサークルで使ってない機材を教えといてね」
「はーい」
「そういうことだから小田君頼んだよ。千葉君、彼にもあまり深いところを突っ込まないように言っといてね」

 何かおやつでも買ってこようかな、とヒゲがスタジオを後にすれば、この部屋の扉が防音仕様なのをいいことに地下でふつふつと怒りのマグマが煮えたぎるのだ。アイツは一体何なんだと。
 そして俺にどうしろとうなだれる小田ちゃんをアタシと桃華で励ますと、彼の口からは甘いものでも食べたいねえ、とポツリ。それじゃあ行きますかと立ち上がったのは、3人同時。

「あー、でもスケジュールどうしよっかな」
「岡山さんも大変だよね、ゼミ全体のリーダーだし」
「何でこうなってるのかアタシにもわかってないんだけどね」
「ねー早く学食行こうよ!」
「果林、小田ちゃん、帰りにブース寄らない?」
「「賛成」」


end.


++++

久々に+1年の3年生の話。3人目がいるのといないのとではやっぱり大違いだなあ。小田ちゃんがいつの間にかレギュラーだよ。
そしてミキサーの道を突き詰めろとか言っときながら、あまり深いところを突っ込むなというのもめちゃくちゃなヒゲ教授です。
まあ、+1年のこの時期だとサークルでの実権というものは果林&Lからタカエイに移ってるんだけど、言わないほうがいいね!

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