エコメモSS

□NO.1201-1300
16ページ/110ページ

■惚れた弱みのナントヤラ

++++

「なあ慧梨夏」
「なーにー?」
「お前、さては趣味のために俺を売ったろ」

 慧梨夏は普段から趣味の活動に対する「資料」という物を求めている。いつものようにパソコンのディスプレイに向かう慧梨夏を見て、疑惑が確信に変わった。

「なんのことー」
「とぼけんな。学祭3日目、何故か俺が女装でMBCCブースの売り子やるハメになったときお前なんつった」
「今日は黒髪のツインテールでお願いします、ショーパンにニーハイはデフォですよね」
「だな。そんでライトグレーのパーカー着せてゴツいヘッドホンさせて。それをきゃーかわいーとかってデジカメで撮ったよな」
「うん、撮ったね。パーカー+ヘッドホンの少女は目の保養ですゴチソウサマでした」

 大学祭2日目、偶然にも女装ミスコンでミスの栄冠に輝いてしまった俺は、「使える物は使う」というスタンスの高ピーによって3日目も女装でMBCCブースの売り子をさせられることになった。
 そして前述の尋問通りの服装で売り子をさせられたのだけど、その画像が今、お絵かきソフトのキャンバスと一緒にディスプレイの上にあるという状況証拠だ。

「お前、俺の女装写真を資料にして片桐さんへの誕プレ絵描いてるだろ」
「ぎくり。ソ、ソンナコトナイヨー」

 オンライン上の友達である「片桐さん」とやらから9月には誕プレとして絵の詰め合わせ4枚セットをもらった慧梨夏は、来る片桐さんの誕生日には絵で返すということは前々から言っていた。
 今までにチラリと聞かされてきた片桐さんの嗜好が、ロリ年齢+ツインテール、そしてメカメカしい物だとか。「片桐さんもBLくれたしロリツインテで返す!」というのも何度も聞いてきた。

「ホント、お前も高ピーのことをどうこう言えないぞ。使える物をこれでもかと使ってるな」
「高崎クンの商魂ほどじゃないよー」
「いや、むしろお前の方が段違いに悪質だ。つか高ピーが生徒会長でお前が副会長やってたとか星高マジ怖えーわ」
「失礼しちゃうな」

 そう言いながらもするすると絵の下絵が少しずつそれらしくなっていくのだから。
 ノルマは4枚だしあと2枚描き上がるまでは忙しいね、などと言いながらも生き生きとしている彼女を止めることが出来ないのも思い知らされている。

「大体カズだってさー、女装だからっていろいろやりたい放題してたじゃん」
「ほー? 言ってみろ、俺が何をどうやりたい放題してたって?」
「主にベッドで」
「その節はスイマセンデシタ」

 確かに普段はないシチュエーションだからと言ってヤりたい放題ヤりましたよね。
 それをお前だって楽しんでただろと反論するにも出来ず、黙ってそれを呑み込むしかない。惚れた男の弱みというヤツか(多分違う)。

「でもさ、描いてるの女の子だろ? 俺を参考にしたところで胸とかでいろいろ変わるんじゃねーの?」
「大丈夫、片桐さんロリはつるぺたに限るって言ってるから男の子くらいがちょうどなの。あとその辺はうちのフィルターで補完してる」
「オンだからともかくそれを言ってるのが普通に三次元の男だって考えると犯罪だよな」
「大丈夫、三次元には興味ないって」

 俺を女装させるという長年の夢を叶えつつ、裏ではこんなことも企んでやがったのかと思うと我が彼女ながら実に恐ろしい。だけど、そういうところが好きだなんて、どうして言える?
 ワーカホリックで、公私ともに忙しければ忙しいほど頭の回転も手も速くなって。腐ってても、裏には私利私欲があろうとも。それが輝いて見えるのは、惚れた男の弱みなんだろうな。


end.


++++

片桐さん(石川)の性癖www このいっちーと雨宮さんのお話では本人不在のところで石川の性癖がどんどん明かされますねw
なんだかいい話風にまとまってしまったけど、いつもどおり残念ないっちー×慧梨夏のお話であるということには違いありません。
確かに高崎が生徒会長で慧梨夏が副会長で、さらに蒼希が書記だった星港高校の生徒会マジ怖えーわ。

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ