エコメモSS

□NO.1601-1700
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■欲求を踏み鳴らせ

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 高ピー先輩が有無を言わさずメシ食いに行くぞとか、甘いモン食いに行くぞとかってアタシを拉致するのはたまにあること。急な誘いも、アタシのスケジュールを大体把握されてるからだと思う。
 今日やってきたのは美味しそうな匂いが漂うトンカツ屋。店内には活気があって、食べる意欲もどんどん上がっていく。さて、どんなカツを食べようか。ちょうどお腹空いてたんですよねー。

「高ピー先輩メニュー見なくていいんですか?」
「俺はトンカツ定食に飯大盛りって決まってんだ」
「スタンダードタイプですね」
「お前の場合、悩むくらいなら全部食うっつー選択肢もある分、必要なのは思い切りだな」
「さすがにそこまでのお金は持ち合わせてませんー」

 さすがのアタシでもトンカツ定食だと焼き魚定食とかよりは食べれる量が減ると思う。やってみたことはないからわかんないけど。とりあえず、初めて来る店だし高ピー先輩と同じ定食にすることにした。
 定食系メニューの他には丼物メニューやカツ鍋系のメニューなんかも載っていて、カツを幅広く取り扱っている店なのかなという印象。周りを見渡せば、カツ丼を食べている人もいる。これも美味しそう。

「高ピー先輩」
「ん?」
「どうしてまた急にトンカツだなんて」
「気分だな。いや、カツがどうとかじゃなくて、単にガッツリ食いてえ気分だったっつー方が正しい」
「高ピー先輩も結構食べますもんね」
「この店、飯とキャベツがおかわり自由なんだ。ほら、紙貼ってるだろ」
「あっホントだ!」

 白い紙に筆でライス・キャベツおかわり自由と書かれた横に、朱で置かれた二重丸。トンカツ屋ではたまに見るけどこれは本当にありがたいですよ。あっ、出禁食らうとアレだからさすがに節度あるおかわりを心がけてます。
 高ピー先輩によれば、別に一人でいたっておかわり出来るけど、それが普通であった方がなお遠慮もいらないだろう、と。その空間におけるおかわりの常識を塗り変えてしまおうと思ったようだ。

「そういう観点で考えた場合、伊東だの高木だのじゃなくてお前じゃなきゃ確率は上がらねえからな。MBCCの外の連中もあんま食う奴いねえし」
「なーんか引っかかりますけどありがとうございますぅー」

 そんなことを話している間に2人分の定食が運ばれてくる。揚げたてサクサクのトンカツの香りに、色鮮やかな野菜、艶のあるお米。これが美味しくないワケがない。
 高ピー先輩の食べっぷりと言ったらもう。言葉少なに黙々と、大きな一口を繰り返す。キャベツの減りがまあ早い。そうだよね、高ピー先輩ってソースカツ丼でもキャベツにこだわる人だよ。
 そしてかかるおかわりコール。高ピー先輩、本当にガッツリ食べたい気分だったんだなあ。でも四次元胃袋と呼ばれたアタシが圧倒されててどうする。せっかく選んでもらったんだし、何よりお腹は空いている。

「あっスイマセーン、ライスのおかわりお願いします大盛りで! あとわかめうどん追加でー!」
「おかわりの上にうどん食うのか」
「メニュー見てて美味しそうだなって思ってたんです」

 その上に重なるのは、ライスおかわりのコール。やっぱり男の人の食べっぷりは最低でもこれっくらいじゃなきゃ。アタシはもっと食べるしね。
 ああ、なるほど。やっとわかった。つまり今日はアタシも遠慮しなくていいってことか、お店を潰さない程度に。

「高ピー先輩、いいお店教えてくれてありがとうございます」


end.


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果林の影に隠れてるけど高崎も結構食べる人。果林、ノサカ、高崎くらいの順番になるかもしれないひょっとすると。
食欲は食べながらやって来るというおフランスのことわざにもあるので、欲望はきりがないとかいう比喩にも言われるけどそこは意訳要らずにどかどかとステップを踏むよ!
高崎がガッツリ食べたいときに連れて来るのはやっぱり果林になるのかな。だって自分の周りで1番レベルが近いもんね。まあ、果林さん的にはまだまだでしょうけど!

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