エコメモSS

□NO.1601-1700
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■甘いだけでは終われない

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「テスト前だからっていつもやってねえ奴が急に勉強なんか出来るワケねえだろ」
「それはわかってる。だからこそ俺はお前にキャラネーロを食わせてんだろ」

 温かいデニッシュに絡まるキャラメル。いかにも美味そうな“髭”の新メニューを前に、飯野が俺に頼み込んでいる。この時期の頼みごとと言えば講義ノートの他にない。

「と言うよりお前の場合……いや、俺もだけど、互いに奢り合うよか安部ちゃんにかりんとう持ってく方が正しいだろ」
「そりゃお前は足りないのが出席だからだろ。俺に足りないのは学力とノートなんだから、学力はともかくノートは安部ちゃんがくれるモンでもないし。ま、食え!」

 言ってしまえば学食のキャラメルサンデーがデニッシュの上に乗っかっただけのモンだ。不味いワケがない。それを食い進めつつ、飯野に足りてなさそうなノートを物色する。
 大体、大祭実行委員の関係で出席してなかった分に関してはMBCCとの密約っつーか交換条件っていう体で出すのはわかる。問題はその後だ。その後のことについては出すなんて一言も言ってねえ。
 まあ、だからこそこうやって俺は髭に連れて来られ、新発売になったキャラネーロを食わされているのだろう。そしてそれを条件にノートを出せと言われている。
 いや、クリスマス時期に期間限定で出てたチョコネーロの時期から宣伝されてたそれを食いたくなかったかと言えばそりゃもちろん食いたかったけどもだ。

「そんな甘くねえぞ」
「まさか。キャラネーロだぞ。いくら中がほろ苦キャラメルソースっつったってソフトクリーム乗ってんだから甘いだろ」
「ちげェ。あとキャラネーロは甘さとほろ苦さがいい感じにマッチしててうめえ。お前の学力でただノート見ただけでテストに対応しきれるかっつー話な」
「高崎お前バカにすんなよな!」
「バカにするからにはバカにするだけの理由がある」

 1教科分のノートを渡し、大きく一口頬張る。普通のシロネーロみてえに上にかけるシロップを別添にしてもらった方がよかったなこれ。キャラメルソースが全然足りねえ。
 そして飯野は俺が1教科だけで終わるとでも思ってるのかと何故か偉そうだ。キャラネーロを食っているからには、必要な物を得られるまでノートを出せと言い続けるだろう。

「なあ飯野」
「ん?」
「キャラネーロが490円だろ。ノート何教科分を490円で買おうとしてんだお前は。ちなみに俺は木曜2限のノートをもらうのに講義1回につき160円のキャラメルサンデーを1個奢らされてるぞ」
「カツサンドか! それともグラタンか!」
「余ってるお前の出席ボーナスが俺の出席に上乗せされねえかなあ」
「いやお前……それこそ安部ちゃんだろ」

 しばしの沈黙の後に、どちらともなく調べ始めたのは美味い黒糖かりんとうが売っている店だった。やはり今年も賄賂か、賄賂なのか。少しの可能性に賭けたいと思うだけ、危機感を持っているとも言えるが。

「なあ飯野」
「ん?」
「そういや安部ちゃん今年はかりんとうの賄賂は受けねえっつってたぞ」
「かりんとう饅頭か! それとも安部ちゃんもキャラネーロか!」


end.


++++

高崎は実はキャラメル好き。キャラメルソースなんかもう大好き。でも学校で食べてるのはチョコサンデーだったりする。
というワケでテスト前の風物詩、ノサヒロに匹敵する高崎&飯野のあれこれ。でもノサヒロと違って高崎も問題を抱えているのがまだ救いかもしれない。ノサヒロは……皆まで言うまい
ちなみにノート1回分につきキャラメルサンデーを1回奢らせるのは我らが慧梨夏である。タダでとは言わないよね?は元々かの天才サマの名言なのだがそれをまんまと自分のモノにしているのである

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