エコメモSS
□NO.1701-1800
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■血液が麦になる
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はっきり言って珍しい誘いだとは思った。俺が闇雲に拉致ることはあっても、奴から俺に声をかけるということは今までにもあまりなかったことだ。その珍しさがすんなりと話に入らせたのかもしれない。
高木からの連絡があったその日の夜には話を聞いてやろうと会うことになった。奴がどうしても自分の部屋ではダメな理由があると言ったこともあって、今日は俺の部屋で。
「よ、いしょっと」
「カバン、何入ってんだ」
「えっと、今日の本題なんですけど」
「おう」
「ビールと言うか、そんなような味の物をある程度飲めるようになりたいと思ったんです」
それを至って真顔で言うのだから、呆気に取られたのは言うまでもない。高木と言えば、単にアルコールへの耐性で言えばMBCCで一番だ。だが、ビールだけはほとんど飲めないという弱点がある。
自分の部屋で練習していくんじゃダメなのかと訊ねると、自分の部屋だといつ誰に押し掛けられるかわからないからとこれまた真顔で言う。確かに高木の部屋はちょっとした溜まり場にするなら好立地だ。
「で、俺を選んだっつーワケか」
「スイマセン」
「いや、いいんだけどよ。自前でいくらか用意してきたっつーワケか」
「はい」
カバンの中から出てきたビールだの発泡酒だのを預かり、冷蔵庫へ入れていく。結局飲めなかったら先輩が飲んじゃって下さいという言葉が背中に降りかかる。
まあ、単にビールだけで飲むのもな。何か手頃につまめる物を用意して、あらかじめ冷えていた俺の備蓄から2本取り出す。お、こないだLが持って来た餃子も残ってる。これは後で焼くか、飯もあるし。
「じゃあ、飲むか」
「よろしくお願いします」
缶と缶が合わさり、軽く一口。今日はあくまで練習だ。機会が増えれば飲めるようにならねえかというのは誰でも1回は考えることだと思う。ただ、飲めるようになりたいと思ったきっかけだよな、やっぱ。
飲み放題なんかで高木が困ったような顔をしてるのを何度か見たことあるが、それもチューハイが薄くて飲んだ気がしないだのウイスキーがメニューにないだのといった至極MBCCらしい事柄だ。
高木クラスになりゃビールが飲めなくたって他のモンをバカみたいに飲めるんだから苦労はしねえだろうし、焼酎や日本酒だってハナの影響で飲み始めたんだから最悪隅っこでチビチビやってりゃいい。
それこそウイスキーから入ってんだから元々隅っこでチビチビやって落ち着いてるくらいがちょうど良さそうなモンだと思ってたけど、どういう心変わりがあったモンか。
「エイジと果林先輩の影響ですかね」
「あー、なるほどな」
「エイジが飲んでるのを見て飲めたら楽しそうだなって思いましたし、果林先輩が飲んでるのを見て案外美味しいのかもなと思って」
「なら練習にもそいつらを選べばよかったんじゃねえのか。何で俺なんだ」
「高崎先輩はいろいろ知ってそうだと思って。単に勢いや空気で飲むんじゃなくて、場に応じた飲み方と言うか」
俺が1本を空にしたところで気付く。高木がウイスキーだの焼酎だのを飲むときのような味わい方をしていると。それも各々の自由だが、俺のオススメは大きくノドを開くことだ。
「もっとこう、グッと」
「はい」
「おっ、残り半分一気に行ったか。もう1本飲むか?」
「はいー、もらいますー」
「わかった、Lの餃子も焼いてやるからちょっと待ってろ。白い飯も一緒に食うと美味いぞ」
「はいー、食べますー、待ってますー」
おっ?
こりゃガチで耐性付くのはもうちょっと先だろうけど、もうしばらくは弱点を克服されねえ方がいいな。少しでも長く、師らしくありてえじゃねえか。
end.
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何を思ったか、タカちゃんが弱点を克服しようと高崎に弟子入りしたという実にMBCCらしいお話。
と言うかタカちゃんがこれを克服しちゃうとそれこそガチで無双しちゃうから飲めないくらいでパワーバランスがちょうどいいよ!
ちなみにこの時点でハナちゃんの野望(タカちゃんを焼酎・日本酒に染める)はちゃくちゃくと進行しつつあった
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