エコメモSS

□NO.1701-1800
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■ルート&ルーツ

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 伊東から飯を食いに来ないかと連絡が入れば、特に他の用事もなかったしすぐに奴の部屋へと向かう。するとどうだ、机にはもういつでも食える状態の料理が並ぶ。

「あ、高ピーゴメンね急に来てもらって」
「いや、つーか宮ちゃんはどうした」
「慧梨夏は遠征中。今頃打ち上げか聖地巡礼中じゃないかな」
「それは聞かなかったことにするけど、随分と豪勢だな」
「全部冷凍なんだけどね」

 机の上にはこれでもかといろんな物、それこそ惣菜のような物から大判焼きのような甘い物までジャンルを問わず並んでいたが、まさか全部冷凍とか。
 さすがに全部が全部そのまま冷凍ではないらしい。例えば粒のコーンやミックスベジタブルを使ったサラダやスープなんかもある。ほとんどが冷凍食品とは言え、皿に盛り付けてあればそれらしく見える。
 そもそも、学生の1人暮らしで惣菜やカップ麺、冷凍食品の世話にならずにちゃんとした自炊だけでやりくり出来る方が半端ねえっつー話で。いや、コイツは大体出来てるか。

「俺も今は実家なんだけど、今日はやたらバイトが激しくってさ」
「実家に帰る気無くしたってか?」
「それ。慧梨夏もいないし冷食でいいかなーと思って買い物して」
「――にしちゃ量が多くないか」
「結構買ったんだ。で、今日は暑かったし近道をしようと思って細い道に入ったらさ」
「道に迷って溶かしたんだな」

 伊東は自他共に認める方向音痴で、未だに住んでる土地で迷うことも多々あるらしい。ちなみに、住んでるマンションと大学、そしてスーパーなどの主要施設は道一本のところにある。
 道一本のところにあってそれ以上に近道のしようのない立地のはずが、伊東は何か大丈夫そうとかいう根拠も何もない思い込みで脇道に入るとかザラだ。
 もちろんこの方向音痴は地上だけじゃなくて駅地下なんかにも適用される。伊東が待ち合わせでプチ遅刻を繰り返すのはこの原理なんじゃねえかという説すらある。

「再冷凍すんのもちょっとさ。食べきるにも俺1人の量でもないし」
「確かに1回解凍したモン再冷凍したら露骨にマズくなるヤツとかあるよな」
「そうなんだよねー」
「つーかこれミックスベジタブル量多すぎじゃねえか」
「今日のメインだからね実質。ゴメンね高ピーグリンピースあんま好きじゃないのに」
「言ったか?」
「ちゃんと聞いたことはないけど、いつも見てて何となく」

 手元には、ミックスベジタブルを混ぜたチャーハンに、ミックスベジタブルを混ぜたポテトサラダ、それとベーコンとミックスベジタブルのスープ。
 シュウマイの上に乗ってるグリンピースならともかく、こんだけ入ってると避ける気にもならねえし食えないワケじゃねえから避けたりもしねえけど、バレてたか。

「食えるから問題ねえよ」
「そう? でも高ピーにも苦手なモノがあるんだなーって思ったよ、気付いた時は」
「元々グリンピースが嫌いだったのは悠希の野郎でよ。俺の皿にしれっと流し込んできやがって。それを食い続けてるうちに何か嫌になったっつーだけで」
「へー、そんなルーツがあるんだね」

 すると伊東は、まだまだ溶けたミックスベジタブルは残ってるんだけど、と笑えねえことを言ってきやがる。好きじゃねえのわかっててまだ食わすか!?

「食べ切っちゃわないと、ねえ」
「宮ちゃんがいねえなら浅浦はどうした。いや、果林だ果林。言っても俺は結構食ったぞ」


end.


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べっ、別に休みの日っぽい話がないから実家に帰ってるはずのいち氏が緊急登板したとかじゃないんだからねッ!!!(苦しい)
高崎がグリンピースを好きじゃないとか、いち氏が例によって方向音痴炸裂してるとか、ちょいちょい弱点とか欠点とか出てる話。
うん、最後高崎も言ってるけど果林に声をかけるべきだったんだよなあ……果林がいれば全部片付いたもの。

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