夢物語

□☆鈍色狂想詩
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小石を拾ってはポチャンと
水を弾いて沈む…


まるで勇次の心持ちと
同じ様に…


『あ…?三味線屋…お前ぇ何してんだ?』


夜に差し掛かり空が藍色に染まる頃
聞き慣れた声が背後を捕らえる。


『秀…か。随分遅くまでご苦労だな』


刺のある言葉を秀に投げ付ける。


『何が言いてぇんだよ…?いきなりんなトコにいて』


何故勇次が不機嫌なのか
検討の付かない秀。


『今日組紐屋と居ただろう…』


『あぁ…さっきまでな。表の仕事で組紐と簪を使った新作作るのに話してた』


…それかよ。と言った感じに溜息をつき背中から不意に抱きしめて


『勇次…嫉妬てんの…?』
悪戯な口調で勇次に問い掛ける


『……っ。離しやがれ…』


図星を突かれ顔に赤みが差し
耳元まで赤くなる勇次を見て


『機嫌直せよ…今日は…お前ぇの好きにしていいぜ…?』


赤くなる耳元に誘惑滲みた台詞を
囁く秀。


『はっ…。また矧らかす気か…?』
期待半分疑いな勇次の目の前に回り込み

『いや…今日は俺が抱かれてぇ…お前ぇの嫉妬き焼く姿が…欲情させた…』


強請る様な栗色の瞳に
真っ直ぐ捕われる勇次…


『覚悟しやがれ…今日は優しくなんざ出来ねぇからな…。』


ガシガシと柔らかい髪を手荒く撫で
額に口付けると秀の住む家へと
二人で戻り。静かにその引き戸を閉めた。
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