夢物語
□三日月逢瀬
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真ん丸な月が優しい光を放ち
江戸の街を包み込む静かな夜
縺れ合う二つの人影…。
人目を憚り逢瀬を重ね
その身体に互いを刻み込んでいく。
限られた時間はとても儚く
全ては夢絵事だったのかと思う程
空白に近い何とも言えない
焦燥感が二人を襲う。
けれど…一度絡んだ紅糸は
簡単に解す事は適わず
その焦燥感すらも打ち消す様に
また逢瀬を重ねるのだった。
−身体を幾ら重ねても…心に届かない−
紛れも無い事実をその胸中に
抱えたまま今夜もまた
灰暗い部屋の中で二つの影が縺れた。